今回は、医師であり、スタートアップの投資家である中安杏奈さんによる「医師 × VCが見るヘルスケアトレンド」コーナーから、5月28日の配信記事を掲載します。
生成AIの開発が急速に進むなか、ヘルスケア界で最近よく議論されているのは「医師はAIに代替されるのか」という論点です。
先日医学界の有名専門誌「JAMA」に掲載された論文では次のことが発表されました。それは「医師とChatGPTを比較すると、医学的アドバイスの質・共感力ともにChatGPTが高評価」というものです。
そんななかで注目を集めているのが、ヘルスケアに特化したLLM(大規模言語モデル)を開発している、米国のHippocratic AI(ヒポクラティックAI)というスタートアップ。CEOは連続起業家で、有名VCであるa16zとGeneral Catalystが支援、出資しています。5月16日にシードで$50M(約69億円)の資金調達を発表したことも話題となっています。
医療においては、著しく不安な状況にある個人とのコミュニケーションが中心になります。正確性や共感力が一層重視されるため、さまざまな医療専門職の意見をもとに独自開発を進めているといいます。
実際GPT-4と比べると、
・患者の状況に共感力を示す
・患者個人の背景に興味を持ち、個として関係性を構築する
・歯科、医療事務、医師、看護師、薬剤師などの資格試験の点数
といった点で優れた成績を残しているとのことでした。
特化型LLMが質・共感力を一層高めるとすれば、私たちの「大事な健康問題は生身の人間に相談したい」という感覚も徐々に変わってくるのかもしれません。
医療現場では、脅威との考え方があるのと同時に、スタッフ不足の解決策として期待する声も多くあります。現場や患者側のニーズを捉えたAIが開発されると、一気に導入が進む可能性もあるでしょう。
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