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小山薫堂(以下、小山):大林さんがアートに興味をもったのはいつですか?
大林剛郎(以下、大林):最も古い記憶は、洋画家・川島理一郎の「ヴェニスの嘆きの橋」です。祖父は川島の支援者で、父がその作品を自宅に飾っていました。個人的な体験としては、小学生のときに父がアメリカ出張で買ってきた、ジャクソン・ポロックの絵のジグソーパズルですね。
小山:小学生の息子にお土産で?
大林:ええ。アクションペインティングで描かれた抽象画なので、完成させるのが大変だった。高校の時には美術部に入って、高校生対象の展覧会にエッチングを出したのですが、見事に落選して(笑)。その時に私はアーティストじゃないんだなと気づいたんです。むしろ見るほうなんだなと。
小山:そしていまでは現代美術のコレクターになったわけですね。作品を選ぶとき、大林さんは直感を大事にされますか?
大林:いや、グローバルに誰がどのように活動し、どのように評価されているかは、すごく勉強しています。
小山:自分としてこのテイストは好きではないけど買う、ということは?
大林:それはないですね。自分が好きであることが前提です。
小山:初期には安藤忠雄さんのドローイングを集めていたそうですが。
大林:安藤さん、高松伸さん、アルド・ロッシなどの建築のドローイングを個人的興味から収集していました。でも、建設業にたずさわる自分がコレクションすると、どうしても仕事と関係があるように見えてしまう。しかも同時期にMoMAのインターナショナル・カウンシルのメンバーになったところ、日本の現代美術についてよく質問されるようになって。だったらそういう作品を私が収集し、紹介する義務があるのではないかと思い、日本の現代美術について勉強しはじめました。
小山:ちなみにいま、神様がやって来て「お前の好きな作品をプレゼントしよう」と言われたら、何が欲しいですか。
大林:ピエト・モンドリアンの「コンポジジョン」でしょうか。70億円という価格もそうだけど、美術館が収蔵したので、残念ながら手は出せませんけどね。
古いだけだと「ローマ」になる
小山:最近行ったレストランで印象に残った店はありますか。大林:金沢のスペイン料理店「レスピラシオン」です。シェフは石川県生まれの幼馴染み同士で、そのうち2人はバルセロナでの修業経験がある。料理は地産地消を目指して、蝦夷鹿以外はほとんど地元の食材を使っている。建物も築140年の町家をリノベーションし、インテリアや装飾も地元の会社を使っているんです。
小山:古くてよいものを残しながら、新しい文化をミックスしている。