欧州

2023.05.20 13:00

モンテネグロの35歳政治家がめざす「長寿立国」への道

モンテネグロの政治家ミロイコ・スパイッチ(Filip Filipovic/Getty Image)

病気の治療から予防に重点を移すことはほかの国々でも提案されている。取り組みがいくらか進展している場合もあるものの、多くは政治的あるいは構造的な壁にぶつかっているのが実情だ。そのため多くの国は後期高齢者の病気の治療に莫大なコストをかけ続けているが、患者はせいぜい数年長生きできるだけで、その間の生活の質もよいものではない。
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米国では、最大1兆ドル(約138兆円)にのぼるメディケア(高齢者向け公的医療保険)予算のうち、30%が人生最後の年に費やされている。モンテネグロはこうした不幸な現状を打破することで、長寿に関して世界のリーダーになるチャンスをつかんでいる。

人口の高齢化が医療制度にもたらす課題は世界各国の政府が痛感しており、モンテネグロの取り組みは改革モデルの1つになりえる。モンテネグロの医療政策はすでに予防と効率に力点を置いて運営されていて、医療費の国内総生産(GDP)比を5.3%(2019年度)に抑えつつ、その比率が9.7%に達する英国に近い平均寿命を実現している。

スパイッチの党にとっては、モンテネグロの議会制民主主義と、複数政党の連立が基本となる政治体制のなかで支持を広げていくことも課題になる。スパイッチが長寿立国に向けた計画を進めて成功させるには、志を同じにする他党と組むことが必要になるだろう。
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ただ、スパイッチが勝利を収められなかったり、すべての目標を達成できなかったりしたとしても、そこで提示されたアイデアは、ほかの国々にとってよい検討材料になるに違いない。

イスラエルは最近「長寿国家」に関する会議を開催し、サウジアラビアは長寿バイオテクノロジーを支援する「ヘボリューション財団」を設立した。米国ではモンタナ州が進歩的な先進的な「試す権利法」を成立させている。これらは各国が国民の健康と長寿を競い合う新たな波の、ほんの始まりにすぎないのではないか。

こうした競争を通じて長寿テクノロジー版シリコンバレーが誕生する可能性もあるし、その過程で生み出されたイノベーションはすべての人に恩恵をもたらすものになるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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