英~豪を2時間で結ぶサブオービタル飛行、人体への影響は「軽微」か

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英国~オーストラリア間の飛行時間は現在、およそ20時間となっている。だが「サブオービタル(準軌道宇宙)飛行」の実現によって、2033年にはちょうど2時間になると見込まれている。

ロケットのように高度約100kmまで行く(宇宙を経由する)ことで、地上の2地点間を移動するサブオービタル飛行が乗客の体にどのような影響を及ぼすのか、研究を続けてきた英国の民間航空局(CAA)が、新たな調査結果を発表した。

航空宇宙医学のジャーナル「Aerospace Medicine and Human Performance」にCAAが発表した空軍とキングス・カレッジ・ロンドンとの共同研究の結果によると「大半の乗客には、有害な生理的反応は起こらないと考えられる」という。

離陸後、乗客には約30秒間、4Gがかかるとされる。航空宇宙医学を専門とする医師(フライトサージャン)であるCAAのライアン・アンダートンによれば「重力加速度(G)がかかる段階で、乗客は呼吸に苦しさを感じたり、一時的に視野が狭くなったりする」

こうした変化が起きるのは、動脈が硬くなることで血流が滞り、血液が脳へ流れにくくなるためだという。もともと動脈が硬化しており、脳から遠い部分に血液がたまりにくくなっている高齢者の方が、その影響を感じにくいこともあるかもしれないとされている。

航空業界に起こる「革命的」な変化

旅客機のサブオービタル飛行が実現すれば、技術的には地球上のどこへでも、2時間以内で行くことが可能になるという。シドニーとロンドンの間をこの時間で移動できるというのは、革命的なことだ。

両都市の間を結んだブリティッシュ・エアウェイズの超音速旅客機「コンコルド」は1985年、バーレーン、コロンボ、パースで給油し、17時間3分45秒という最短飛行時間の記録を達成した。

また、オーストラリアのカンタス航空のロンドン~シドニー線は現在、1カ所で経由する便を運航している。だが、2025年にはこの間を19時間で結ぶ直行便を就航する計画だ。どちらの都市でも日の出を見ることができる便となることから「プロジェクト・サンライズ」の名を付けている。

カンタス航空が運航する英国との直行便はいまのところ、西海岸のパースとロンドンを17時間で結ぶ1路線のみとなっている。

航空運賃もいずれ手ごろに?

サブオービタル飛行には現在、65万ドル以上(約8900万円)がかかる。だが、CAAは、ロンドン~シドニー間の直行便の運航が実現すれば、その当初の価格はおよそ35万ドルとなり、需要が伸びれば、さらに安価になると予想している。

ただ、環境問題の専門家らは、旅行者にとってのメリットは、必ずしも地球にとって良いものではないかもしれないと指摘している。サブオービタル飛行に利用される「ロケット」の燃料は、現在のところ規制の対象となっていない。ランチのために地球の反対側まで行くことが一般的になる前に、対応する必要がある問題だろう。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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