2023.05.17

温暖化で増加する乱気流、AIが解決策に?

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地球温暖化が引き起こす気象パターンの不安定化は、航空業界にとって大きな問題となりつつある。ただ、旅客が増加する乱気流に悩まされるようになるとは限らない。他の多くの産業で活用されている人工知能(AI)が、ここでも役立つのだ。

米紙ニューヨーク・タイムズは、最先端のセンサーやデータモデリング、人工衛星ではAIによる機械学習が行われており、飛行時の揺れ軽減につながる可能性があると報じている。

米航空宇宙局(NASA)は3月に発表した報告書で、地球温暖化による垂直ウインドシア(高度1万5000フィート以上での風速と風向の急激な変化)増加の影響で、乱気流が増加すると指摘した。この「晴天乱気流」は2050年までに10〜40%増え、飛行機が現在の高度で飛行することは難しくなる可能性がある。

また、雲の上でみられる晴天乱気流は、単に空気の流れが加速・減速することにより起こるため、パイロットが検知するのはかなり難しい。航空会社は地球を周回する4つの主要なジェット気流を避けることで晴天乱気流を回避できるかもしれないが、そうすると飛行時間が延び、燃料を多く消費することになるため、コストの増加につながる。

科学者たちは現在、気象パターンや事象を新しいソフトウエアに読み込ませ、AIに学習させる作業を続けている。これらのプログラムは、アルゴリズムによって予測と実際の結果を照らし合わせ続け、より信頼性の高い予測を毎回提供できるように学習している。

例えばIBMでは、巨大なモデリングシステムが他の100のシステムからデータを取得し、そこに米国立気象局の衛星データや、世界中のタワーやビルに設置された25万以上の気象台からのデータなどを加えている。

政府も動いている。欧州連合(EU)が資金提供した最近のプロジェクトでは、旅客機の飛行に関係する官民の組織が大規模なデータ共有を行い、航空便の遅延を予測・回避・軽減するためにAIを活用する方法を研究している。

データ共有は、航空会社の遅延軽減につながる。特に、離発着の時間枠が非常に小さい(時には45分しかないことも)場合にはこれが役立つだろう。最小限の遅延でも、空港全体、そして空港を利用するすべての航空会社のその日のスケジュールを狂わせる可能性がある。

航空会社がいかにAIを必要とし、活用を進めているかを示す一例として、独ルフトハンザ航空の取り組みがある。スイスのチューリッヒ空港では、北東から南西に吹く風によって、30%ものフライトが遅延や欠航となるが、ルフトハンザ航空はGoogle Cloudを使ったAI予測によって風のパターンをより正確に予測し、相対的精度を40%向上させた。

AIを活用して気象パターン、そして飛行ルートを予測することで飛行にかかる燃料を大幅に節約できることは、多くの航空会社が認めるところだ。米連邦航空局(FAA)の報告によると、フライト遅延の約75%は天候不順が原因であり、これは乗客と航空会社の双方にとってAI活用の大きな動機となる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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