ビジネス

2023.06.04 09:30

カリフォルニアロールと寿司のギャップ その埋め方、活かし方

僕は日本文化のリアリティを伝えることに可能性があると思っています。ギャップを埋めないままだと、いつか日本文化は可能性をなくして沈んでしまう。日本人は外を見ないからそれがわからないんです。

特に今の若い人は海外に出ないので、日本文化がどんどん衰退してなくなることがリアルに見えていない。そして、見なければいけないとも思わない。それが心配で、そういうことを伝えたいと思ってこの番組をやっています。

岡田: 当社は日本の中小企業が海外販路を拓くためのコンサルティングもしていて、2021年にはジャパンブランドの海外支援パートナーに正式に登録されました。僕個人は2018年から中小企業機構の海外販路アドバイザーをさせていただいています。

食に限らず、いろいろな企業が日本にあるものを海外に伝えていくサポートするなかでわかったのは、日本は良いものを作ることが美徳で、それを発信することは考えずにものを作っているということです。アメリカの企業は逆で、まずマーケットインすることを考えてプロダクトをつくります。

また、日本人は、努力したことや頑張ったこと、その結果よいものができたのだということは伝えないことが美徳だと考えます。そういう感覚があるのは日本人だけで、海外の人には理解が難しい。

中道:ありったけで伝えなければだめですよね。


岡田:そうです。そこを伝えないと。食品のセールスをしている時に、アメリカのお客さんに言われたんです。「日本人は日本食を舌で食べるだろう。僕らは目で見て、頭で理解して、初めてその味がどういうものなのか理解するんだよ」って。

これだなと思ったんです。「美味しいので食べてください」と言うより、食べたいと思わせることが大事なんだと。この温度差を埋めていくことが、コンサルティングの肝なのだと。

中道:ものがいいということはもちろん大事ですけど、ものの背景にあることが形になってブランドが強くなっていくんですよね。ところが日本を見ると、いまだに良いものを作れば売れると思っている。もうそんな時代ではないということを、旅でもいいので、もっと世界に出て、見て、知ってほしい。この番組でも毎回繰り返しています。

岡田:日本ではあたりまえのことが海外ではあたりまえではありませんからね。良いものやサービスを海外に発信していくうえでは、その違いを理解することで伝える力が生まれ、マーケテイングや設計図になります。

言い換えれば、自分の中の多様性、自分の中の許容範囲を広げることです。それができた企業や人が海外でも成功するのかなと。できるだけ多くの日本人が海外に出て多様性を知り、自分の中の多様性を広げてもらうことが大きな一歩を踏み出すきっかけになると思います。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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