欧州

2023.05.12

EUでAIの包括的規制案、「顔認識を用いた大量監視」を禁止へ

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欧州連合(EU)の欧州議会の2つの委員会は5月11日、公共の場所での顔認識や生体認証テクノロジーを用いた大規模な監視活動の禁止などを盛り込んだ、人工知能(AI)の規制案を承認した。

この規制案は、公共空間でのリアルタイムの生体認証システムの使用を禁止することに加え、顔認識のデータベースを作成する目的で、SNSや監視カメラ映像から生体データを無差別に収集する行為を禁止している。

規制案の策定に参加した欧州議会議員のBrando Benifeiは「すでに押し寄せている巨大な変化に対応し、世界レベルのAIの議論に参加するためには、人々のAIの発展に対する信頼を築き、ヨーロッパのやり方を確立することが重要だ。この規制案は、人々の基本的な権利を保護しつつ、欧州のイノベーションを刺激するバランスが取れた内容になったと確信している」と述べた。

一方、欧州議会の域内市場・消費者保護委員会(IMCO)のSvenja Hahnは「我々は、市民の権利を保護しつつ、イノベーションと経済を後押しするための妥協点を見つけることに成功した。議会が公共空間での生体認証による監視の禁止を求めることは、リベラルの勝利であり、加盟国との交渉のための強いシグナルとなる」と述べている。

しかし、ドイツ海賊党の欧州議会議員のPatrick Breyerは、この規制案は、プライバシー保護のためにさらに踏み込むべきだったと考えている。

「この規制案の本会議の投票では、公共の場での人々の行動を監視し、異常とみなされる行動を報告する行為も、禁止項目に追加されるべきだ」と彼は述べ、フランス政府がヨーロッパに持ち込もうとしている大量監視テクノロジーが「多様性を冷え込ませ、我々を順応に追い込むものであり、我々が住みたいオープンな社会とは正反対のものだ」と主張した。

一方で、ハイテク業界の多くは、この規制案がイノベーションを妨げ、欧州企業が国際的に不利なることを懸念している。中でも、オンライン・プラットフォームのレコメンドシステムを高リスクに分類し、著作権要件を盛り込んだことが、特に懸念されている。

「EUにとっての最善の方法は、新しい規制で有用なAIアプリケーションの開発を阻止することではなく、むしろ可能にすることだ」と、コンピュータ通信産業協会(CCIA)の政策マネージャーのBoniface de Champrisは述べている。

この規制案は、6月の欧州議会の本会議で採決され、可決された場合はEUの各加盟国と欧州委員会で審議されることになる。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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