National Physical Laboratory(英国立物理学研究所)の報告によると、0.6かそれ以上の閾値で使用した場合、89%の確率で正しい照合(真陽性率)が行われ、誤った照合(偽陽性率)は0.017%であることが判明した。
人種や性別に関しても、統計的に有意な偏りは見られなかった。
「私たちが使用している設定では、人種や性別にかかわらず性能は同じで、誤照合の可能性はカメラを通過する6000人に1人程度であることがわかっています。検知されたすべての照合は、警官によって手動で確認されます。警官が一致すると思えば、その後職務質問することでカメラの照合が正しかったかどうかを判断します」と、ロンドンのメトロポリタン警察のインテリジェンス担当ディレクター、リンゼイ・チスウィックはいう。
「この研究は、人口統計学上で有意差があると判断するに十分に大規模なものです」
この研究は、2年前にこの技術の正確性やプライバシー侵害の可能性について激しい議論が行われ、使用停止に追い込まれたことを受けて、メトロポリタン警察とサウスウェールズ警察から依頼されたものだった。
サウスウェールズ警察のジェレミー・ヴォーン警視総監は「イギリス国立物理学研究所の活動と独立した評価結果によって、市民の安全を守るために利用できるあらゆる方法と技術の利用が、今後も支持されると信じています」と述べている。
「私達は、顔認識技術の利用が公正、合法、倫理的、そしてつりあいのとれたものであることを証明できる、かつてないほど強力な立場にたてていると思っています」
しかし、人権団体はこれに反対しており、Big Brother Watch(ビッグ・ブラザー・ウォッチ)は、6000人に1人の誤検出率があれば、何万人もの人々が誤ってフラグを立てられることになると指摘し、差別の危険性を強調している。
「この報告書は、リアルタイムでの顔認識には人種や性別による大きな偏りがあることを認めた上で、警察がそれを軽減するための設定を用いることができるとしています。警察内の組織的な人種差別や性差別が繰り返し指摘されていることを考えると、警察はこのような差別的な技術をまったく使うべきではありません」と、法務・政策担当のマドレーヌ・ストーンは述べている。
「警察も監視リストの民族的内訳の開示を拒否していますが、顔認識の実用の場面では、黒人男性や黒人の子どもまでもが誤って照合され、止められているのを繰り返し目撃しています」
一方、ロンドン議会緑の党のキャロライン・ラッセル党首は、この報告書はライブでの顔認識技術の倫理的問題を考慮していないと述べている。
「すべてのロンドン市民、特に過剰な取り締まりと保護を受けてきたコミュニティは、警視庁がどのように監視対象者を決定するのか、また犯罪被害者や指名手配者の関係者など、監視対象者がどのように扱われるのかについて、透明性を求めるでしょう」と彼女はいう。
「顔認識に関する政府の法律はないので、ロンドン市民全員の市民的自由が守られるように倫理的、法的な障壁が克服されない限り、どんなに正確に作ったとしても、顔認識を導入すべきではありません」
また、この調査はボランティアと録画された映像を使用しており、人種に関しては、混血が考慮されていないという懸念もあがっている。
(forbes.com 原文)