クリーンエネルギー投資への拠出は不均衡
IEAによると、新型コロナウイルス危機以降のクリーンエネルギーに対する政府の投資支援のほぼ全て(95%)が先進国で行われ、先進国全体では1兆1450億ドルが投入されています。そのうち米国が約半分、インフレ抑制法による投資金額だけでも3700億を占め、欧州連合(EU)が37%(約450億ドル)の投資をしています。しかし、国際的な価格高騰により、途上国や新興国は消費者の負担軽減策に重点を置き、電気、輸送、調理用燃料のコスト削減に向けて1140億ドルを短期的に投入しました。
IEAのビロル事務局長は、「このような地理的な偏りは懸念すべき事態であり、国際社会が介入して新興国や途上国におけるクリーンエネルギーの投資促進策をとらないと、多くの国が取り残される危険性がある」と警告しています。
エネルギー危機から消費者を保護する政府の措置
IEAは、グローバルなエネルギー危機により、消費者の負担軽減が政府の最重要課題になっているとしています。これらの支援策が始まったのは2021年9月ですが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて大幅に拡大しました。「支援策には減税、燃料補助金、エネルギー価格規制によるコスト補填、流動性支援(エネルギー企業の救済や融資・信用保証、請求猶予)が含まれ、世界の政府が国内の家庭や企業を対象に実施したエネルギー価格支援策の規模は、総額約6300億ドルに上る」と報告書は述べています。
この緊急支援支出の8割以上を先進国の政府が拠出しており、うち半分以上を占めているのが、エネルギー危機によって大きな影響を受けるEUだとIEAは報告しています。
クリーンエネルギーへの転換を追跡する
グローバルなエネルギー転換の基本となるのが、産業の脱炭素化です。産業排出量の 80%を占めているのが、5つの産業(セメント・コンクリート、鉄鋼、石油・ガス、化学、炭鉱)です。世界経済フォーラムは、10年以上にわたって、「エネルギー転換指数(ETI)」を通じてグローバルなエネルギー転換を追跡してきました。「効果的なエネルギー転換の促進2022年報告書 (Fostering Effective Energy Transition 2022 Edition)」のアップデートでは、最近の ETIの動向を踏まえ、現在の課題と転換促進に向けた優先事項に焦点を当てています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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