音楽

2023.05.13 12:00

起業2年目で組織が崩壊。危機を乗り越えたSKY-HIのリーダーシップ

経営者、音楽プロデューサーとして腕を振るうSKY-HI

組織の崩壊を感じたBMSG設立2年目

——著書によると、BMSG設立2年目に「組織の崩壊を感じた」とのこと。どのようにその危機を乗り越えたのでしょうか。
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2020年9月に起業し、2021年半ば頃まではスタッフ5~6人と少人数体制でした。2年目に入って業務量が増えてきたこともあり、人手不足で組織の崩壊を感じました。

僕も経営者とはいえ1年目は「THE FIRST」に100%身を投じてしまっていたので、経営者が経営をしないと組織が組織として機能しなくなるのだなと。

実は、AAAのときもマネージャーがいない時期がありました。でも当時「この人がいないとどうにもならない」というのはステージ上に立つAAAのメンバーくらい。本来はアーティストが崩壊しないために組織があるんですけど、その経験から、やるべきこととやる人が決まっていたら、たとえ欠員があっても勝手に物事は進むということも知っていました。
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採用を頑張ってはいるけれど、急に人が何人も入ってくることはありえない。そのことを、BE:FIRSTのメンバーも含めて全員にあけすけに話しました。一番大変だった2021年10月からの3カ月間は「年内にはきちんと整えるから、今はこの皆で一緒に走り抜けましょう」とお願いし、傷だらけになりながら走り抜いたという感じでした。

BE:FIRSTのメンバーは新人なので、どういう状況が“普通”なのかもわかっていなかったとは思いますが、我々を信じてくれたのは心強かったし助かりましたね。社内のスタッフも全員同じ問題意識を抱えて、同じ目標に向けて走れたので、結果として団結が生まれたように思います。

——組織が大きくなっていく上でどうしても通る道だったと、振り返って感じますか。

そう思います。成長するに従って経営の体制は変わりますよね。会社自体の経営はもちろん、セクションやアイテムごとの運営の体制も変わっていく。成長するなかでハレーションが起こるのは至極一般的なことだと思います。

「スタートアップではよくあることだよ」と経営者の知人などにも言っていただいて気持ちは楽になりました。

即時的なバズではなく、“音楽ファースト”を貫くこと

——起業当時と比較して、この3年で音楽業界、とりわけボーイズグループをとりまくプロデュース環境に変化が起き始めているのではないかと思います。この先、BMSGが担っていきたい役割とは。

BMSGという会社や成績、その影響力が業界内に何かを伝播させている可能性については、因果関係は正直あると思っています。それは誇りにも思うし、同時に責任も負う。今一番必要なことは、起業時に掲げていた理念や哲学に改めて向き合うことですかね。

それはつまり、「音楽ってなんだっけ」をもっと考えていくこと。盛り上がりは即時的なお金やブームを生みやすいですが、そこを目標にしたばかりにブームが起きた後にブームの前より廃れることってよくありますよね。それでは本質的でなくなってしまう。

アイドルでもアーティストでも呼称は何でもいいんですが、彼らが「何を職業としているのか」と言ったら「音楽」であるはず。スキャンダラスなドキュメンタリーやオーディションなどはバズを生みやすいですが、そのために話題が先行するよう仕掛けるのは本質ではありません。

「しっかり音楽をやる人たち」という本質を忘れずぶらさず、貫くこと。「音楽ファースト」であり続けられるように頑張ることが、今のBMSGが担うべきことだと考えています。


3月30日に発売した著書「マネジメントのはなし。」(日経BP)

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取材・文=堤美佳子 編集=田中友梨 撮影=小田駿一

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