「ポータブル原子力発電機」で世界を変える元スペースX社員

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ラディアント社はまた、ヘリウムを冷却材とする冷却システムの採用を目指しており、この仕様であれば事故の可能性を大幅に低減し、原子炉が突然停止しても、メルトダウンを防げるという。同社は、電気ヒーターを用いたこの冷却システムの最初のテストを2024年に実施する予定だ。

スペースXでの「発見」

ベルナウアーは、もともと原子力エンジニアになろうとした訳ではなかった。2007年に、スペースXに入社した彼は、航空電子エンジニアとして再利用可能ロケットのGrasshopperの開発に関わった。その後、このロケットの開発に成功した彼は「イーロンの奇妙なサイドプロジェクト」に参加するようになったと話す。

その中には、スターシップ・ロケットに燃料を補給するために、火星で太陽光発電を行うというアイデアがあったが、あまりにも非現実的で、彼は代替案として小型原子炉の調査を開始した。

その後、2019年に米国防総省が、軍が使用する持ち運び可能な原子力発電機の開発に向けて、産業界に募集をかけた。ベルナウアーにとって、これは火星での利用を想定して取り組んでいた小型原子炉のコンセプトを実証する絶好の機会と思えた。軍を顧客にすれば、収益や規制の面でも有利になるからだ。

そこで彼はスペースXを退社し、ラディアント社を設立した。それ以来、同社は連邦政府のプログラムに基づき、アイダホ国立研究所やアルゴンヌ国立研究所との協力を開始した。同社の設計がエンジニアリングテストで実証され、規制当局に承認されれば、強力な市場開拓の可能性があるとベルナウアーは考えている。

しかし、今のところ彼は、1970年代の原子力産業の最盛期以来、初めて承認され、商業市場に投入される新型の原子炉の1つを持つという野心的な目標を達成することに専念している。また、彼は、遅延や予算超過が当たり前になっている原子力業界の意識を変えることも目指している。

「原子炉の設計から建設まで、期限と予算内で行えるようになれば、すべてが変わるかもしれない」とベルナウアーは話した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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