ロシアはかねてよりウクライナを政治的にも経済的にも、特に天然ガス問題を巡って強固に支配してきた。現在の侵攻が開始されるはるか以前から、ウクライナ人はこうした広範な抑圧を打破しようと模索し、2014年にはロシアに支援された自国の大統領を追放することに成功した。そして今、ウクライナはエネルギー生産で自立すると誓っている。しかし、同国の未来は欧州への天然ガスの純輸出国になることができるかどうかに懸かっている。
ナフトガスのチェルヌイショウCEOはインタビューで次のように語っている。「ロシアは長年、ウクライナのエネルギーを操作し、わが国を依存させ続けてきた。私たちは今年、自給自足を目標に掲げ、消費量と同じだけのガスを生産しようとしている。わが国はガスを10億立方メートル増産する計画で、これが実現すれば輸入をしなくて済む。これは絶対に可能だ」
ナフトガスはウクライナ最大の国営エネルギー企業で、石油や天然ガスのほか、再生可能エネルギーも手掛けている。天然ガス分野では、生産から精製、流通、貯蔵、販売に至るまで、一手に引き受けている。
ウクライナの天然ガス埋蔵量は9050億立方メートルに及び、ノルウェー、英国に次ぐ欧州第3位の規模だ。1960~70年代にかけては年間約700億立方メートルの天然ガスを生産していたが、1991年(訳注:ソビエト連邦の崩壊でウクライナが独立すると)、ロシアはシベリアに生産の軸足を移したため、ウクライナの生産量は半分以上落ち込んだ。現在の生産量は年間200億立方メートル弱で、うち75~80%をナフトガスが担っている。紛争が終結し、外国からの投資が増えれば、ウクライナはエネルギーの自由を手に入れることができるだろう。
だが、これも一朝一夕にできることではない。ウクライナは昨冬、国民生活と経済を維持するために10億立方メートル近くの天然ガスの輸入を余儀なくされ、残りを国内生産で賄った。
ウクライナは地理的にロシアと欧州の間に位置しており、年間1460億立方メートルの天然ガスを輸送できるパイプラインを複数有している。さらに310億立方メートルの貯蔵施設もある。その容量の半分程度は自国のために必要だが、欧州がその残りを利用することも可能だ。
興味深いことに、ロシア産天然ガスの一部は依然としてウクライナ経由で輸送されている。ウクライナはすでにその消費からは手を引いているが、欧州の同盟国への輸送には力を入れているのだ。だが、ウクライナとロシアとの天然ガスの輸送契約は来年で切れる。
チェルヌイショウCEOは「安価なガスには代償がある。ロシア産ガスは欧州とウクライナに対する武器になってきた。ウクライナが向こう数年以内に生産を拡大すれば、欧州はロシア産ガスをウクライナ産に置き換えることができるようになるだろう」と強調した。