国内

2023.05.01

上場企業で1兆円超の「公募」 スタートアップ投資で活用されない理由

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スタートアップを中心にビジネスのトレンドを、メールで隔週お届けしている「Forbes JAPAN Newsletter」。本連載では、その内容をピックアップして紹介します。

今回は、日本金融経済研究所の代表理事である馬渕磨理子さんによる「スタートアップ政策 馬渕磨理子はこう見る」コーナーから、2月5日の配信記事を掲載します。
 
スタートアップ育成5カ年計画の柱の一つで、政府もすでに動き出している「資金供給の強化と出口戦略の多様性」。公開されている5カ年のロードマップを見ると、初年度は投資資金を増やすことを目指した政策が目立ちます。

投資家の数を増やし、資金が循環する手立てとしての一つとして「公募」があります。第一種金融商品取引業者、いわゆる証券会社などが投資家を募り、スタートアップに投資するというやり方です。

特に個人投資家にとっては、企業の選定と審査をプロに任せられるというメリットがあります。

しかし、国内での公募には厳しい規制やルールが存在しています。 

非上場企業が「公募」を行う場合、1億円以上調達するには有価証券届出書を国に提出しなければなりません。その書類に対する監査法人の証明手続きなども含めると、体力的にもコスト的にも大きな負担となり、現状はほとんど利用されていません。 

また投資家が株式を売買する際の仲介業者(証券会社など)の一般投資家向けの勧誘は原則禁止されています。私募の枠を超えた50人以上の投資家勧誘では、日本証券業協会の定める株主コミュニティ制度を利用した銘柄のみ可能、といった厳格な規制が課せられています。 

米国では未上場企業が公募をするために「小規模公募」といった形の法整備がなされています。5億円までを株式投資型クラウドファンディング(日本では1億まで)で、5億円から80億円程度までを小規模公募でカバーしており、資金供給の仕組みは多様です。 

そして証券取引所を介さない店頭取引という仕組みが存在しているため、投資家は、その名の通り店頭で株式を売買することができます。 

2021年、日本の上場企業ではIPOを含めて1.37兆円の公募が行われました。非上場企業にも認知が広がり、選択肢の一つになることを期待したいです。


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文=馬渕磨理子

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