このTシャツの説明文には「ホラ話を退治するときに着るのがベスト(Best worn while vanquishing Malarkey)」と書かれている。
「ダーク・ブランドン」が何を意味するのかを説明する前に、まずはここ数年で「ブランドン」という言葉がインターネット上のミームとして定着した経緯を解説しておこう。2021年10月に、ブランドン・ブラウンという名前のNASCARのレーサーがテレビのレポーターの優勝インタビューに応じている際に、後ろにいた群衆が「ファック・ジョー・バイデン」と叫び声をあげていた。
しかし、そのレポーターは彼らがブランドンのファンで「レッツゴー・ブランドン」と叫んでいるのだと思い込み「観客もあなたを応援していますね」と問いかけたのだった。
このインタビュー動画はトランプ支持者の格好の嘲笑ネタとなり、またたく間にネットで拡散。彼らは、あちこちで「レッツゴー・ブランドン」と叫ぶようになった。その後、トランプは、このミームを用いた公式グッズを発売した。
しかし、ミームはしばしば進化するもので「レッツゴー・ブランドン」もまさにそうだった。リベラルなネットユーザーは、ブランドンという名前を肯定的に捉え始め、右派の議員がネット上でバイデンについて文句をいうたびに「ブランドンが挨拶してくれる」といったミームが登場した。そして、ブランドンはバイデンを表す言葉になり、民主党はそれを使うことを良しとするようになった
そして登場したのが「ダーク・ブランドン」だった。トランプ支持者たちは、トランプの目からレーザー光線が出ているレーザー・アイの写真やイラストをよく使うが、それのカウンターパートとして作られたのが「ダーク・ブランドン」で、バイデン大統領の目に描かれた赤い星は、彼の強さのシンボルとされている。
掲示板のRedditには「ダーク・ブランドン」のコミュニティがあり、そこでは中道的な政治家であるバイデンに物足りない人々が、このミームを用いて彼のソフトなイメージを刷新して楽しんでいる。
バイデン陣営が売り出したのはTシャツだけでなく、マグカップもあり、説明文には「紅茶を飲む人も大歓迎です」と書かれている。
インターネット文化が、まだメインストリームではないと考えている人の間違いを証明するための材料がまた1つ出てきた。80歳のバイデンでさえ、奇妙なオンライン・ジョークを広めることを楽しんでいるのだ。
(forbes.com 原文)