カギは犬の「菜食化」 ペットフードから考える気候変動対策

(Getty Images)

犬は人間の最良の友だ。人間に対する親交や愛情、献身は、文化の違いを超えて評価されている。米国では、ペットを自分の家族の一員だと考えている飼い主が、2007年の88%から現在は95%と、ほぼ全員と言えるまでに増加。中間層の拡大などを背景に、ペットの飼育率は世界的に上昇している。

ペットを飼うことによって運動量が増えるほか、血圧が下がり、心臓病のリスクが減るなど、飼い主の生活も豊かになると言われている。また、子どもの自尊心の向上やうつ病のリスクの低減、社会との関わりや結び付きを強めるといった心理的な効果とも関連性があるとされている。

新型コロナウイルスの流行によって社会的な交流が激減したことで、ペットを飼う人は大幅に増加した。米動物虐待防止協会(ASPCA)の報告によると、全米の2300万世帯、つまり約5分の1の世帯が、コロナ流行後に犬や猫を飼い始めたという。

ペット飼育がもたらす気候変動への影響

ペットの増加により、課題も生じている。都市部では、特に猫などのペットによって野生動物が減るという研究報告もある。ペットの排せつ物による負荷や、犬のふんを除去するためのビニール袋の使用、ペットのおもちゃの埋立地への廃棄といった問題も指摘される。そのほか、露天採鉱が必要なベントナイト粘土を使用した猫砂が環境に及ぼす影響を懸念し、有機原料を使用した製品を強く推奨する声もある。

多くの人はペットに惜しみない愛情や金をつぎ込む。特に、気候変動への関心が高い18~25歳の層では、この傾向が顕著だ。ペットのためにどのような商品やサービスを購入するのかを尋ねると、特別食や処方食(44%)のほか、誕生日プレゼント(39%)、誕生日ケーキ(34%)、クリスマスプレゼント(34%)、衣料品や衣装(32%)、高級ペットフード(28%)という回答が寄せられた。

英経済誌エコノミストの記事によると、南米ではこれまで人間が残した食事を飼い犬に与える家庭が多かった。ところが最近では、ペットに専用の食品を購入する層も増えているという。その結果、犬は摂取カロリーの約4割を市販の食品から得るようになった。同記事は「ペットの飼い主は、より高級な食べ物を買い与えるようになっている」としている。

市場調査会社ユーロモニターは、メキシコのドッグフードの売上が2013年以降、実質25%伸びていると推定。この傾向は、他の国々でもみられる。先の記事では、フィンランドのペットショップの店主が「犬用のアイスクリームをはじめ、膨大な種類の調理済み食品を販売」し、「生肉用の大きな冷凍庫も2台備えている」ことを紹介。店員によると、より自然で健康的だと信じて、生肉を市販の食品に加える犬の飼い主が増えているそうだ。
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翻訳・編集=安藤清香

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