ほぼ肉レベルの代替肉と米の再生。「美味しさ」が廃棄を減らす

大豆由来の代替肉サンプル(不二製油)。その食感は「すでにもう肉」と言っていい。

「代替肉のバーガーで有名な米『インポッシブルバーガー』のCEOパトリック・ブラウンと話した時、『もしこの肉が牛よりも体に良くて、地球に良くて、美味しくて、同じぐらいの値段で提供できたら、誰もわざわざ牛を殺して食べる人はいない』と言っていました。まさにそうだと思う。今までの代替肉はちょっと豆腐みたいな味がしたり、何か妥協を感じました。環境や体に良くて更においしければそれが妥協ではなくなる。そうなったときに初めて、やっぱり普及するんじゃないかなと思います」

代替肉、というワードは注目度を失ったようにも見えるがそれは正しくない。今、「おいしい事例」に進化し次々と新体験が生まれている。

米では、22年にケンタッキーフライドチキンの「ビヨンドチキン」という代替肉のナゲットが発売され、英のマクドナルドでも、「マックプラント」の名で代替肉バーガーが登場した。宅配食のパンダエクスプレスでもビーガンチキンがメニューに加わった。

国内でも、美味しい代替肉として知られる「NEXT MEATS」が代替カルビ肉を生み出し、焼き肉チェーンでメニューとして展開されたし、茨城県つくば市による麹菌から生まれる「菌肉」というプロジェクトなど、実際に味わえる機会が増えている。

不二製油は素材のメーカーであるため黒子的存在だが、多くの大豆由来の原材料を提供している。その「肉肉しさ」は驚きの完成度で、特に、肉の特長である繊維質の再現度は、そのリアルさを表現する形容詞を思いつかないほどだ。

不二製油では試食会が行われ、山田もその可能性に期待を寄せた。

 不二製油は、大豆肉のほかに、その素材を活かすための「ダシ」にも注力しており、中華系、洋風のフォンなど、食材を活かすベースフードの質は高い。

不二製油は、大豆肉のほかに、その素材を活かすための「ダシ」にも注力しており、中華系、洋風のフォンなど、食材を活かすベースフードの質は高い。


「不二製油さんも、美味しくないと代替肉や大豆由来の食品素材の発展が厳しいことを理解されています。これは日本のインバウンドにも関係してきますね。東南アジアからの観光客はムスリムも多く、日本には行きたいけれど食に困るという話も出ている。ここに貢献できるのは観光資源が次のテーマと言われる日本の光だと思う」

山田は、れすきゅう米や不二製油での体験から、世界で勝てる日本の鍵を挙げた。

「お米の神様も、おいしいを追求する姿勢も、日本が世界に勝てるのは日本人が持つ内的な成長への意識だと考えています。インナーディベロップメントゴールズですね。不二製油さんの大豆由来製品の技術も、その意識が生んだものかと思います。食品ロスはこれからさらに重要なテーマになってきます。日本が劇的これを解決できる意識と技術はすでにそろっている。あとは、それを知ってもらう、商品として買ってもらう。ここは私の仕事でもあります」

新しい食品素材の可能性は、美味しいかどうか。その探究心は日本の強みなのだ。

文=Forbes JAPAN 編集部 写真=西川節子(人物)

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