ほぼ肉レベルの代替肉と米の再生。「美味しさ」が廃棄を減らす

大豆由来の代替肉サンプル(不二製油)。その食感は「すでにもう肉」と言っていい。

美味しくなければ意味がない

また、山田は数多くのメゾン系ブランドやファッションブランドとのコラボレーションで食糧廃棄に取り組んでおり、例えばれすきゅう米の米粉は「グッチ」のレストランでパスタに一部が活用された。

「米粉を100%使ってくれてもその店独自のレシピでは美味しさが保てないこともあります。100%使ってくれるレストランが3社あるより、30%だけ配合して美味しさを守ってくれるところが10社あれば、『環境に良い以前にまず美味しい』が広がると思います。できること=美味しい、をできる範囲で行うことがまずスタートだと思うんです。

そして、信頼ある企業さんやブランドさんが率先して形にしてくれることで、その影響力が地球上の約半分のCO2を排出していると言われる上位10%の富裕層に届く事はもとより、多くの人がその取り組みを知るところになり、広く食糧廃棄を感じてもらえるきっかけになるんです」

 山田がブルガリと協力し作った「____」。素材には____が使われている。

山田がブルガリと協力し作ったビスコッティ。素材には、れすきゅう米の米粉が使われている。


グッチやアルマーニ、ブルガリなど華やかな世界で、手に取り、口に入れる食品が「廃棄されなかったもの」でできていることは強い印象を消費者に植え付ける。この効果は力のある富裕層を変え、商品を愛する広い消費者層に伝わる。

「何もしないより、一足飛びの未来より、ひとつずつ形にしていき多くの人に知ってもらうのが食の明日につながる」と山田はいう。

わざわざ牛を食肉にすることはない、の意味

山田は2月、大阪にいた。れすきゅう米の倉庫管理を伊藤忠食糧の担当者とともに確認するためだが、さらに足を伸ばした。「代替肉」を見るためだ。

「地政学的なリスクから穀物の問題は深刻です。食糧だけでなく飼料にも影響し、ただでさえ生産効率が高くない畜産業には大打撃で肉の価格にも影響が出ます。昨今の健康ブームもあり、食肉に変わる代替肉の普及は、多様なバリエーションと技術的な効率の高さで食糧廃棄にも一役買う」と山田は重要視している。

2021年10月、パソナグループとカゴメ、不二製油グループ本社らが全12社と連携し、プラントベースとライフスタイルの持続可能社会を目指す団体「Plant Based Lifestyle Lab」を設立した。その中核の1社である不二製油は、大豆由来の食品素材の代表的な製造企業だ。実際に一部の製品が有名人気ラーメン店で商品として販売されるなど、「実は不二製油の素材」という製品が普及している。

試食で出た豚骨ラーメン。麺もスープもすべて大豆由来の素材でできている。

試食で出た豚骨ラーメン。麺もスープもすべて大豆由来の素材でできている。

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文=Forbes JAPAN 編集部 写真=西川節子(人物)

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