2024年問題に向けて岸田首相の動きも
なぜそうまでして荷主企業が対応を始めなければならないのか。それは物流の人手不足の起因となりうる2024年問題が迫っているからだ。時間外労働の規制が物流業界に適応されることにより、toB向け、とりわけ長距離に対する輸送力に懸念が生じている。そしてなかなか改善に向かわない状況に、政府も本気の対応を取り始めた。
議論は以前から進められてきたが、昨今の動きはメディアにも取り上げられ、注力している印象を受ける。2023年3月末には2024年問題に対する閣僚会議が開催され、岸田首相も出席した。6月を目処に政策を決定する方針である。
遡ること2023年1月には、物流の効率化を荷主に義務付ける法改正の中間案を示した。他にも「荷主特別対策チーム」が編成され、厚生労働省のホームページには「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」を新設するなどの動きが見られる。
つまりこれまでは荷主企業に対して物流効率化に「協力を求める」形であったところから、いわば「強制力の行使」に近い形に変わってきているのだ。経済が停滞する懸念を恐れてのことだろう。すでにそのことに気づいた大手企業が手を打ち始めているともいえる。
利益を極限まで追求するための手積み・手おろしは効率化の義務に反すると捉えられるかもしれない。運賃の値上げ交渉を理由もなく、のらりくらりと交わせば公正取引委員会が動くかもしれない。これまではまかり通ってしまった、当たり前を見直す必要がある。
もちろん物流の安定供給が叶わなくなれば、困るのは運送業界ではない。商品を作っても供給できないメーカーであり、売るための商品が届かない卸・小売りであり、店舗でほしいものがほしいときに買えなくなる消費者だ。
運送会社だけで解決できる課題ではなく、小売・卸・メーカーなどの荷主企業が鍵を握る。今回の1/2ルールへの変更を考慮すれば、我々消費者の立場としても、買い物の際は手前にあるものから購入するなど、工夫できる点はあるだろう。
2024年まで残り1年、対策を急ぐ。
参考文献
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/20230329/586/
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/008_01_01.pdf
田中なお◎物流ライター。物流会社で事務職歴14年を経て、2022年にライターとして独立。現場経験から得た情報を土台に、「物流業界の今」の情報を旺盛に発信。企業オウンドメディアや物流ニュースサイトなどで執筆。