食&酒

2023.04.29 17:00

じわじわと盛り上がる「山梨県ガストロノミー」の景色

八ヶ岳湧水鱒の低温調理 アスパラガスとブラッドオレンジ2種のソース

パレスホテル東京が2022年から「Essence of Japan」と銘打ったイベントを提案している。これは「最上質の日本」の提供を目指して同ホテルが企画しているもので、昨年は名旅館とのディナーや、各界の巨匠を迎えた文化体験を開催して話題を呼んだ。

5月16日には、第三弾となる「Essence of Japan ー山梨を堪能する初夏の晩餐ー」が開催される。インバウンドが急速に復活してきた今、日本の地方を発掘したいという需要が増していることを受け、日本のローカルガストロノミーにスポットをあてるというものだ。先般、メディア向けの先行体験会で披露された料理とワインのペアリングの一部と、そこから見えた山梨県のガストロノミーの景色をお伝えしたい。 

盛況を見せる山梨県の「食」 

日本の47都道府県の中でも、なぜ山梨県なのか。ここには様々な理由があるが、同ホテルの渡部勝総支配人は、「北杜市に当ホテルの契約農園があり、その食材の魅力を知っていただきたかったのがひとつです」と語る。山梨観光大使を務める「はじまりの食卓」の宮下大輔氏との縁も重なり、日本の食文化発掘の旅路のスタート地点として山梨県が選ばれたそうだ。

実はいま、山梨県の食が熱い。もともと、豊富な生産量を誇る果物はじめ、南アルプスの名水が育む魅力ある食材に恵まれたエリアであるが、「海なし県」のイメージからか、食で注目される機会が少なかったと宮下氏はいう。

しかし、県や行政機関の取り組みも手伝い風向きが変わってきた。「富士の介」や「甲斐サーモン」といったブランド魚はもちろん、「甲州地鶏」や「甲州富士桜ポーク」など山梨県ならではの銘柄肉の知名度も増している。さらに興味深いのは、それらの食材を扱う地元シェフの技術力の高さと、次々に台頭する若手料理人のパワーだ。 

今回のイベントには、いま勢いのある山梨県を代表するレストランから2名のゲストシェフが迎えられる。『La Cueillette(キュイエット)』オーナーシェフの山田真治氏と、 『TOYOSHIMA(トヨシマ)』オーナーシェフの豊島雅也氏だ。

山田真治氏は1964年生まれで山梨県出身。東京やフランスのシャンパーニュ地方の名店でキャリアを積んだ正統派フランス料理人として知られている。一方、豊島雅也氏は30代の若手料理人。猟師、養蜂家などの顔を持ち、自ら生命と対峙しながら食材を調達するという、独自のスタイルを開拓している新世代のシェフである。 

左から:齋藤正敏氏(総料理長)、山田真治氏、豊島雅也氏、窪田修己氏(統括ペストリーシェフ)

左から:齋藤正敏氏(総料理長)、山田真治氏、豊島雅也氏、窪田修己氏(統括ペストリーシェフ)


そして山梨県と言えば忘れてはならないのが、土地の料理と共に愛飲されているワインだ。大手メーカーから極小ガレージワイナリーまで様々な造り手が割拠する日本ワインの代表産地として知られている。

今回のイベントでは、多数の県内のワイナリーから抜擢された中央葡萄酒(グレイスワイン)の厳選ワインが料理を彩ることになる。創業1923年の中央葡萄酒は今年100周年を迎えた。グレイスワイン醸造家の三澤彩奈氏セレクトによる希少なワインを、彼女の解説と共に楽しむことができる貴重な機会になりそうだ。 

各国で研鑽を積んだ経験を活かし、日本ワインで世界に挑むグレイスワインの栽培醸造家 三澤彩奈氏

各国で研鑽を積んだ経験を活かし、日本ワインで世界に挑むグレイスワインの醸造家 三澤彩奈氏

次ページ > 山梨県が凝縮されたマリアージュ 

文=瀬川あずさ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事