山梨県が凝縮されたマリアージュ
先行試食会で体験した魅力あふれるペアリングの一部をここにご紹介したい。・前菜(豊島雅也シェフ)
こちらはフランスの伝統料理である「パテアンクルート」を山梨仕様に昇華させた一品。 富士山麓で獲ったジビエのフレッシュな野性味に寄り添うのは、三澤氏のお母様の手による干し柿の郷愁を誘う優しい甘味だ。シェフが山で摘んできた山椒がエレガントなスパイスとなり、料理に絶妙なアクセントを与えている。
合わせる赤ワイン「あけの 2020」は100周年記念の特別ラベルで登場。メルローを主体としたボルドーブレンドで、明野町の太陽の恵みが映された果実味と心地よい樽のニュアンスに、洗練されたスパイス感がきめ細やかに融合している。エレガントな余韻の中に、雄大な大地のワイルドさをも感じさせてくれる印象的な一本だ。この力強さとエレガントさの妙が、パテアンクルートに見事に調和する。スパイス感の同調もあり、驚くほど料理に馴染み、リッチな味わいの一品を心地よい清涼感で終えることができる。
・魚料理(山田真治シェフ、豊島雅也シェフ)
湧水で育った上質な鱒を塩漬けにした後燻製にかけ、ふっくら仕上げた一品。山梨の矢崎屋ファームのブラッドオレンジのソースと山梨県産の甲州をたっぷり使ったオランデーズのエスプーマを合わせ、地域色を出している。添えるのは鮮やかなアスパラガスのグリエと、菜の花、ニンニク、パルミジャーノなどを使ったピューレ。キャラウェイ、コリアンダー、クミン、そして山梨のナッツ類がアクセントとして効いている。
この魚料理に合わせる白ワイン「三澤甲州 2021」は、まだ市場にリリースされていない最新ヴィンテージ。2020年はリリース後すぐに完売してしまった人気商品だが、今回はいち早くイベントの参加者に提供されるという。
グレイスワインにとって特に思い入れのある甲州の中でも、最も強いこだわりを持って造られるトップキュヴェ。明野にある三澤農場の垣根仕立ての畑で、厳格な収量制限のもと栽培された甲州だが、醸造時にMLF(マロラクティック発酵)が自然に起こっているため、清々しい和柑橘のニュアンスに加え、クリーミーさと複雑味を持ちあわせている。この酸とまろやかさが料理に違和感なく溶け込み、滋味深い余韻へと繋がっていく。
今回の体験会では、山梨県食材の奥深さやワインと料理の調和から、風土の豊かさを感じ取ることができた。また、それを引き出してくれた山梨の職人達の技と感性にも心を奪われるひとときとなった。
5月16日のイベント当日は、料理が6種類、ワインが5種類提供され、パレスホテル東京総料理長の齋藤正敏氏のアミューズや、統括ペストリーシェフの窪田修己氏のデセールも楽しむことができるそう。山梨県の注目度の高さを反映するかの如くこの会はすでに満席となっているが、第四弾以降も「Essence of Japan」ナビゲートによる、食文化探求の旅の行方に期待したい。