宇宙

2023.04.17

350光年の彼方に形成過程の惑星発見、観測史上3例目

モナッシュ大学の研究チームが、HD 169142系の新たな近赤外画像を公開した(HAMMOND ET AL (2023). MONASH UNIVERSITY SCHOOL OF PHYSICS AND ASTRONOMY)

観測史上わずか3例目、地球から何光年も離れた太陽系外惑星が形成されるところが撮影された。

オーストラリア・メルボルンにあるモナシュ大学の研究チームは、Royal Astronomical SocietyのMonthly Noticesに掲載した論文で、350光年離れた恒星系で、天文学者たちが原始惑星と呼ぶものが形成されている新たな画像を公開した。

HD 169142はいて座の恒星で、高密度なガスとちりからなる円盤で囲まれている。2014年以来、天文学者らは過去の研究で推測していたが、今回の画像は、円盤の中に新たに形成された若い惑星が存在していることを明らかにした。

この惑星はHD 169142 bと呼ばれ、チリにある欧州南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)で直接撮影された。

上の画像は、巨大望遠鏡に取り付けられたSPHEREという機器が捉えたもので、4地球年相当の軌道を表している。撮影は2015年から2019年にかけて行われ、ちりに埋もれていたにもかかわらず、画像化に成功した。



惑星は、この写真によって形成過程にあることが確認された。恒星からの距離は、およそ海王星と太陽の距離くらいだ。このような直接撮影をするためには、天体が中心星から十分離れている必要がある。過去に同じように撮影された太陽系外惑星は、PDS 70 bおよびcの2例だけで、いずれも恒星PDS 70を周回している。

「恒星から約37 au(天文単位)にある原始惑星を、4回の観測すべてで検出することに成功し、その惑星がケプラーの第3法則で定義された速度で中心星を周回していることを確認しました」と論文の主著者で、モナシュ大学物理学・天文学校の博士候補生イアン・ハモンドはいう。

ケプラーの第3法則は、惑星は中心星から遠いほど、ゆっくり周回するとしている。

可視光を反射しながら自らは赤外線を放射するHD 169142 bは、恒星を囲う円盤に隙間を刻み込んだことがわかっている。「形成されている最中の惑星は高温であったと予測し、近赤外線を使って観測することで、HD 169142の周りで惑星が形成されている痕跡を探しました」とハモンドはいう。

「近赤外線では、惑星によって円盤の中に渦上の腕が作られるところを見ることができます。これは同じような渦巻を持つ他の原始惑星系円盤にも、未発見の惑星がある可能性を強く示唆するものです」

原始惑星系円盤が衛星を有している可能性も推測されている。

HD 169142 bは現在、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使って研究されていると研究チームは話した。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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