サステナビリティへの意識が高いアジア市場
溝渕の次の目標は、アジア進出だ。アメリカンクッキーの本場、アメリカでグローバルなサステナブルブランドとしての土台を築いたのちに、アジアでの展開を見据えている。なぜアジアなのか。溝渕はアジア市場のサステナビリティへの意識の高さを挙げる。商品を購入する際に「環境や社会のサステナビリティ」を最優先して選択する消費者の割合は、日本よりアジア太平洋地域のほうが圧倒的に高いのだ(ベイン・アンド・カンパニー、2022年6月)。
日本の消費者のなかで、「サステナビリティを最優先する人」は全体の5%と非常に限定的だが、中国は日本の5倍、タイやインドは日本の4倍となっている。その理由のひとつは、環境問題が生活と密接に結びついていること。これらの国は、大気汚染による健康被害や、海面上昇による水没の危機などが深刻な問題になっているからだ。
もうひとつは、食料品店の棚が大手メーカーに占領されていないため、環境配慮型の新しい商品が棚に並びやすいこと。そういったビジネス環境があるため、環境配慮型の商品が一般消費者のもとに届きやすいのだ。
「私はこの調査結果を知るまで、環境問題に関心を持つのは生活に余裕がある先進国が中心だろうと思い込んでいて、驚きました。でもこれはプラントベースの商品を広めるチャンスがあるということ。ゆくゆくは世界中で展開していきたいと思っています」
世界をリードするブランドに
もちろん、並行して日本国内での事業拡大にも力を入れる。2023年は3月には東日本橋店をオープンしたほか、10月にも都内で新たな店舗をオープン予定。そのほか、メーカーと協業でプラントベースの商品開発なども進めている。「アメリカに行くと、ヴィーガンの飲食店で当たり前のように豆腐などの日本の食材が使われているのを目にします。それを見て『本当は日本のお家芸のはずなのに』と思っていました。そもそも日本人は、魚介は食べるものの欧米に比べてチーズやミルクを摂取する文化がなかった。なので、日本人だからできることがあるはずだと思っています。食の脱炭素の分野で、世界をリードしていきたいです」
>>最終回
【連載】OVGOの軌跡
第1回 三井物産を辞めクッキー屋さんに 「ovgo Baker」はこう誕生した
第2回 日本の飲食店初の「B Corp」 世界基準のクッキーブランドとは
第3回 クッキーブランド「ovgo Baker」原宿店 Z世代が集まる仕掛けとは
第4回 日本発アメリカンクッキーブランドがNYに進出。その勝算は?(本記事)
第5回 日本発「アメリカンクッキー」ブランドの資金調達 投資家は何を評価した?
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