マインドが開けたことでラグビーへの向き合い方も変化。自分の得意なことをやればいいと、開き直ることができた。
「みんな悩んでいる。でもだからこそ甘えられないと思ってしまう。その心の壁をちょっとでも下げることができれば、多くのアスリートは救われるんです」
この3年にわたり川村を中心に選手会では、主に海外で普及している選手たちのメンタルヘルスの向上やウェルビーイングの支援を目指すサポータープログラムである、PDP(Players DevelopmentProgram)の現場を視察し日本に取り入れようとするなど、メンタルヘルス啓発に繋がるさまざまな取り組みを進めた。当時まだ名前のなかった「よわいはつよいプロジェクト」も徐々にそのかたちを整えていく。
プロジェクトのキーマンであるコピーライター吉谷吾郎、そして国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター所属のメンタルヘルスの専門家、小塩靖崇のふたりが積極的にかかわり始めたのは、2019年の冬、日本開催のラグビーワールドカップ閉幕後の時期だった。
群馬県の私立桐生第一高校で行われていたメンタルヘルスに関する取り組みを視察したきっかけで3人は知り合う。小塩は川村と出会った当時を振り返る。
「私の専門は学校のメンタルヘルスでした。川村さん、吉谷さんとの意見交換から、アスリートのメンタルヘルスに取り組むことに社会への波及効果があることを感じ、興味をもちました」
小塩が川村との会話で知ったのは、特にトップアスリートは、子どものころは地域で神童と呼ばれるような人も多く、成長とともに高いステージに進んできたというマインドセットを持つ傾向。「競争的な環境の中で勝ち抜いてきたビジネスパーソンにも共通する」と小塩は分析する。選手会との取り組みは社会に対して意義のあることだと確信をもてた。