初回集計結果では、正社員の賃上げ率が平均3.8%引き上げとなり、1993年以来の高い伸び率となりました。
今後は、この賃上げの勢いが日本の雇用の70%を占める中小企業に波及するかどうかが、日本経済再生の鍵を握っています。本題について世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。
毎年春に、労働組合と経営陣が、賃金の引き上げや労働時間の短縮などといった労働条件の改善を交渉する春季労使交渉(春闘)。今年は、正社員の賃上げ率が、平均3.8%になったとする初回集計結果を労働組合の中央組織・連合が発表しました。
近年の賃上げ率は2%前後で推移してきたところ、今年は大手企業の異例な賃上げ発表が相次ぎ、大きく跳ね上がる結果となりました。パートや契約社員などの非正規労働者の賃上げ率は、時給ベースで5.91%。前年同期比で3.35ポイント増えました。
こうした賃上げの原動力となったのは、急激な物価の上昇です。1月の全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)は、前年同月比4.2%上昇と41年4カ月ぶりの伸びを記録。一方で、1月の日本の1人当たりの賃金は、物価変動を考慮した実質で前年同月比4.1%減少しています。実質賃金の減少は10カ月連続となり、消費税率8%への引き上げの影響で物価が上昇した2014年5月以来、8年8カ月ぶりの下落率となったのです。
大手自動車、電機メーカーがそろって賃上げ
日産自動車は、今の賃金体型が導入された2005年以降最も高い水準の月額1万2000円の賃上げをするとして、労働組合の要求に対し満額回答。また、トヨタ自動車は、過去20年間で最も高い水準となる最大9370円の賃上げを発表し、ホンダも30年ぶりの高い水準となるベースアップ相当分と定期昇給分と合わせて月額1万9000円の賃上げを満額回答しています。パナソニックホールディングスや日立製作所、三菱電機などの電機メーカー主要12社も、基本給を底上げするベースアップで月額7000円の賃上げを全社が満額で応じました。
急速な物価上昇が歴史的な水準に達しているものの、賃金の伸びが追いついていない中、国民の生活が圧迫される現状を経営者が直視し、対応した結果、近年にない高水準の賃上げが実現したと見ることができるでしょう。