コロナ禍を経て、ヘルスケアビジネスに大きな変化が訪れている。最新のトレンドについて、医師であり、日米のヘルスケアビジネスに詳しい投資家でもあるSozo Venturesの中安杏奈に聞いた。
コロナ禍後の米国のヘルスケア業界で、主に注目しているトレンドは、以下の3つです。
ひとつ目は、コロナ禍で加速したオンライン診療ブームをきっかけとして、遠隔モニタリングや予防医療を組み合わせることで、究極の個別化医療を目指す流れです。
ウェアラブルによる日々の健康状態の評価、声や顔の表情などのバイオマーカーによるメンタルヘルスのモニタリング、AIを活用した健康診断結果の解析などを活用したハイブリッド診療を行い、適切な生活習慣改善や専門診療に結びつけます。現時点ではそれぞれのサービスが断片的に提供されている状態ですが、テクノロジーが確立し連携が進むにつれて、このような個別化医療が一般化し、日常生活に溶け込むと考えています。
ふたつ目は、人材不足の解消です。米国も日本と同様に、コロナ禍で医療従事者にプレッシャーがかかったことで離職率が高まり、人材不足が浮き彫りになりました。そこで、医療従事者が適切な条件下で働くことができ、かつ採用までの期間も短縮できるようなプラットフォームや、AIを活用して業務効率を改善するサービスなどが増加しています。
3つ目は、消費者を中心とするマインドシフトです。テクノロジーを活用した便利なサービスの増加やAmazonなどコンシューマー向けの企業がヘルスケアに参入してきた結果、「医療」というより「サービス」として、いかに患者・消費者に選ばれるケアを提供できるかが重要になってきました。
将来的には、院内でも在宅でも、病気の時も元気な時も、常に最適なケアを受けてベストな状態を維持するという世界に向かうのではと考えています。
なかやす・あんな◎東京大学医学部卒業。産婦人科医として勤務後、スタンフォード大学MBAプログラム修了。Sozo Venturesでヘルスケア投資戦略担当。Portfoliaのリード・パートナー。