「欧米では寄付文化があり、それだけで保護団体の運営も安定しているケースもあるのですが、日本でそれはあまり期待できません。また団体の多くが、自らの身を削って活動するというのが当たり前になってしまっている。そのためコロナ禍で保護する件数が増えた団体は、より苦しい状況になっています」
では、持続可能な保護団体の運営には何が必要なのか。前出のキドックスの上山代表は「運営体制の構築が急務」だと言う。
「例えば、ファンドレイザーを雇って寄付金を集め、活動報告書の作成や資金使途の開示といったバックオフィス業務まで担ってもらう。ボランティアで運営している場合は、マネジメントが得意な有給スタッフを入れ、彼らのモチベーション維持をする。そういった体制強化が必要です。
多くの保護団体では、犬のワクチン代やご飯代など、目先のお金を捻出することに目が行きがちになりますが、それを続けていては、現場はいつまでも自転車操業のままです」
キドックスでは保護活動の他に、カフェやグッズ販売、若者の自立支援など複数の事業を展開している。そして、若者支援の一環として保護動物の世話を彼らに任せている。特定の職員だけでなく、キドックスに集うメンバーを総動員して、保護にあたっているという。
有名企業も続々と保護活動に参画
また直近では大手企業も保護活動に乗り出している。パナソニックは、2022年4月に保護犬と保護猫の譲渡会を開催して280件の譲渡申し込みと95万円の募金を集めた。またイオングループでペット販売を手掛けるイオンペットは、2023年1月に保護犬や保護猫の譲渡専門店を千葉市で開業している。さらに消臭芳香剤や防虫剤などを販売するエステーは、今年4月から保護猫団体へ消臭効果のあるペットトイレの寄贈や譲渡会への参加を始めるという。
OMUSUBIに登録する保護団体にも、企業からの声かけも増えている。ただ、必ずしも全ての企業が、純粋な支援を目指して保護活動に乗り出しているとは限らない。井島はこう話す。
「保護活動への支援や参入は、CSR(企業の社会的責任)の取り組みとして注目を集め始めているように感じます。ただ先ほど説明したように、保護団体さんはそれぞれにスタンスがあるので、方針への共感や、地道な人間関係の構築も大切です。PRの側面が強かったり、ただ資金を提供するのでは根本解決になりません」(OMUSUBI井島)
まずは保護団体が直面する課題や理念を理解して、そのうえで協力の可否を考えるという、これまでOMUSUBIがやってきたように丁寧なコミュニケーションを重ねることが、保護活動を前進させるために必要な前提条件なのだ。