国内

2023.03.27 17:00

犬猫マッチング「OMUSUBI」 280団体の支援で見えた保護活動のリアル

井島は幼い頃から動物好きで自身でも保護猫を飼う。学生時代にはテントに泊まりながらアフリカを縦断したり、自ら保護団体で働いたりもした。2017年、ペトコトにインターンとして加入した井島は、保護団体での経験や繋がりを活かそうと、OMUSUBIの事業に携わり始めた。

しかし、事業は試行錯誤の連続だったという。

「審査を進めるなかでは、団体さんによって異なる保護方針や理念があることがわかりました。他団体さんの価値観を受け入れられず『この団体をOMUSUBIに入れないでください』という意見が挙がったこともあります」



ただ、価値観の相違によって攻撃的なコミュニケーションが生じた場合でも、あくまで毅然とした態度を取り、中立性を保ってきた。こうした姿勢をとることで、保護団体にも里親希望者にも安心感が生まれたという。

飼育放棄を防ぐOMUSUBIの相性診断

その後、OMUSUBIの事業は順調に伸びていったが、1つ課題も生じた。それはチワワやトイプードルといった人気な小型犬種の引き取りはスムーズに進む一方、中型犬や大型犬、そして老犬が残ってしまったのだ。これはOMUSUBIに限ったことではなく、保護犬猫の譲渡活動全体でも起こりやすい問題だ。

そこで、OMUSUBIは2018年に独自の「相性診断」を開発。希望する保護犬猫の特徴やペットとの理想の過ごし方など6つの質問に答えると、自分との相性が数字で表示される仕組みだ。井島は相性診断の効果を次のように話す。

「このサービスを導入してからは、譲渡が進まなかった犬種にも応募が入るようになってきました。ペットを迎えようとするときって、どうしても自分の好みを思い浮かべてしまうんですよね。

でも、好みと相性は異なります。インドアな暮らしをしている人が、活発な性格のボーダーコリーを迎えてしまい、お互いのノイローゼ状態になってしまうといったことも起こります。相性を知ることで、飼育放棄を防ぐことにも繋がります」

実際、OMUSUBIを利用する茨城県のNPO保護団体「キドックス」では、次のような効果が現れているという。

「私たちの団体では保護犬カフェを譲渡の場にしているのですが、どうしても一般的な人気順に引き取られていきます。一方で、人前に出るのがストレスになってしまうような犬や猫は、OMUSUBIを介すると譲渡が決まりやすい」(上山琴美代表)

保護活動の自転車操業をどう解消するか

前述のようにコロナ禍では対面での譲渡会が開催しにくくなり、OMUSUBIを利用する団体が増えた。しかし同時に、経済的理由などからペットを手放す飼い主が増え、相次ぐ引き取り依頼に頭を悩ます団体も出てきている。
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文=露原直人 撮影=藤井さおり

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