その後、彼女は2つ目のアプリ「YouCam Makeup」をリリース。こちらも無料で、写真に口紅やマスカラなどのメイクアップを加えることができる。
しかし、この若者向け路線のビジネスは十分なマネタイズモデルを見つけられなかった。2015年、チェンは80人の従業員(ほとんどがエンジニア)を引き連れて別会社を設立し、パーフェクト社と名付けた。
それからチェンは、自身の技術を美容ブランドに売り込み始めた。その年に、ニューヨーク、パリ、東京、上海に19回にわたって出かけ、企業に売上アップに貢献できることを説得した。
「試したり、試着したりすればするほど、買う人は増える」とチェンは言う。「私の技術は、メイクアップをするすべての人たちが、自分に似合うメイクに迷わないようにするためのものです」。
バーチャルメイクユーザは購入ボタンを「2.5倍率でクリック」?
実際、チェンの技術は多くのユーザーに喜ばれている。クリニークによると、バーチャルメイク技術を利用する人は、他のユーザーよりも4〜5倍も長い時間サイトを利用し、「購入」ボタンをクリックする確率も2.5倍も高いそうだ。そして、購入金額は30%も増加しているという。その結果、この数年間で何百ものブランドが、自身の店舗やウェブサイトにバーチャルメイクのオプションを追加することを決定してきた。
Narsでは、バーチャルで口紅をテスターし、1本以上の口紅を購入した人の数が4倍に増えた。
ベネフィット・コスメティックスでは、バーチャルメイク技術を使って「眉の形や色で遊べる」ようにしたところ、アイブロウ製品を購入した人の数が113%も増加した。
アヴェダでは、ウェブサイト上でさまざまなヘアカラーをバーチャルに試す機会を追加した。その結果、同ブランドの商品を扱う店舗を探すための同サイトの追跡は5倍に増えた。
エスティローダー、世界に8000台のスマートミラーを設置
チェンの技術は、実店舗にも導入されている。エスティローダーは、世界中に8000台のスマートミラーを設置し、商品が自分に合っているかどうかを、ユーザーが素早く簡単に確認できるようにしている。パーフェクト社創業者アリス・チェン。美容業界の大手企業に、彼女のバーチャルメイク技術が必要だと説得している(写真提供:パーフェクト社)
ユーザーたちはコロナウイルスのパンデミックをきっかけに、、快適なオンラインショッピング体験、そしてさまざまな技術を当たり前に思うようになってしまった。企業は、顧客を失望させないために全力を尽くさなければならない。調査会社InsightAce Analyticによると、美容ブランドは2021年に27億ドルをAI技術に費やしたという。2030年には、この額が130億ドルにまで増えると予想されている。