アート

2023.03.30

気づけばアートに引き込まれる「耳で聴く美術館」人気の理由

「耳で聴く美術館」を発信するクリエイター Avi


「アート業界の方々と仕事をご一緒させていただくまでは、業界に敷居の高さを感じていました。でも、歓迎してもらえて、一緒にやっていきましょうとまで言っていただけた。一人で活動するのではなく、共に活動を広げられるなんて素晴らしいことだなと。

この業界の方々も、若手アーティストの方も、お会いする機会が増えるほどに『一緒に何かできるのではないか?』という思いが強まっていきました。結局、この思いは大学時代から変わっていない。私はアートも好きだけど、その周りにいる人々がもっと好きなんです」

クリエイターとビジネスの視点

一方、アートを紹介するクリエイターである自身の活動について、ビジネスとしてはどうとらえているのだろう?

「動画のジャンルによっては収益化がなかなか難しい方もいるかと思います。私の場合、アート紹介というジャンルは、きちんとビジネスにしやすいジャンルです。毎年、全国で定期的に美術展が開かれるので、PRのお話をいただく機会も多くなります。16万人というフォロワー数は100万人に比べたら少ないけれど、アートに『特化』していることが私の強みなのかなと。企業広報の担当者の方も、単純な再生回数より、視聴者にアートに興味を持ってもらえるかどうかを重視して依頼してくださるところが増えてきていると感じます」

とはいえ、「お金は最後についてくるもの」とも。

「動画制作は大変ですから、目先の利益追求だけでは継続できません。私は報酬よりも、やはり、やりたいこと優先です。地方の行政など、予算に限りがある依頼でも、これは発信すべきと思った依頼はできる限り引き受けています。

発信者として生きるためには、作り続けることが何より大事かなと思うんです。今後も、美術に興味がない人も自然と巻き込んでいけるような動画が作りたい。その思いは変わらないけど、時代は変わり続けるし、お客さんも入れ替わっていくもの。だからこそ、私も変わり続けたい。型にハマらず、プラットフォームに頼りすぎず、面白いものを作って発信し続けたいです」


インタビューを終えて(芳麗)

これまで、気鋭のアーティストや現代アートの魅力をユーザーに届ける「橋渡し役」といえば、権威ある評論家や大きな組織でしたが、今や、動画クリエイターもその役割を担う時代に。Aviさんは、至極、バランス感覚に優れた人。礼儀正しく、客観性やビジネスセンスを持つ一方で、アート界とそこにいる人々への深い愛と敬意を持ち合わせ、いまを生きるユーザーに近い目線で動画作りをしている。そのバランス感覚を持って、アート界、消費者、クリエイターの三方良しという理想的な世界を叶えられるのではないかと、希望を感じました。

(左)筆者 芳麗 (右)Avi

(左)芳麗 (右)Avi


芳麗(よしれい)/NHK山形放送局のキャスター業を経て文筆業に。女性の生き方をメインテーマに、雑誌、書籍、Webなど数多くの媒体で執筆。人物を掘り下げたロングインタビューを数多く手がけるほか、恋と愛、生活、カルチャーなどにまつわるコラムも好評。

取材・文=芳麗 写真=西川節子(人物)

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