事業に失敗したら復学も可能
──スタンフォード大学を中退することに迷いはなかったのですか大学中退者がこれほど集中的に大成功を収める業界は、世界でも他にないでしょう。シリコンバレーでは、中退者であることにも多くの利点があると思います。
また、スタンフォードは卒業時期がとても柔軟で、もし事業が失敗して大学に戻りたくなったら、復学が可能です。こうしたユニークなシステムも、リスクをとる際に背中を押してくれました。事業を進めるうえで、様々な失敗をしていますが、その都度スタンフォードのネットワークが私を支えてくれています。
※この記事はジャーナリスト尾川真一(フルブライト奨学生)とともに取材しました。
取材後記
ASESという団体を何と表現すべきかとても悩みました。「サークル」のような気軽さもあれば「体育会」のような活動量や熱量もあり、OBネットワークを持ち合わせている。学生の起業への「興味」をアクセラレータなど次のステップへと繋げる彼らの活動は、まさにスタートアップエコシステムの屋台骨であり、こうした団体が複数あることこそが、スタンフォードが数々の起業家を輩出する所以だと感じました。(尾川真一)キャンパスでは「起業する?卒業する?」との会話を聞くことが普通にあります。先日もキャンパスに、スタンフォードを中退し、最年少のビリオネアとして有名なオースティン・ラッセルが来ていました。彼は自動運転に欠かせないライダー装置の最大手企業として今も成長しているルミナー・テクノロジーズの創業CEOです。
「スタンフォードを中退して起業することについてどう思うか?」と問われた彼の答えは「今始めないと遅れるとわかっているなら、始めない理由はない」というものでした。
大学のキャンパスに中退した起業家が来て、大学中退をしてでも起業するべき時について語る。この自由な発言機会、大学の寛容さもまた、起業家が生まれる背景にあるのだと思います。(芦澤美智子)
ネイサン・ラム◎スタンフォード大学学生起業クラブASES共同代表。エンジニアリングスクール学士3年・修士在籍
アクシャヤ・ダナシュ◎スタンフォード大学を2年生で中退し、スペルバウンドを創業。