欧州

2023.03.19

幸福度ランキング1位のフィンランドへの移住は幸せか? 北欧移住の現実

失敗から学ぶ移住術

「物価が高いので、逆に本当に必要なものしか買わないんですよ。お金の使い方に関しては価値観がすごく変わったし、物欲がなくなりましたね。

ランチは一度で20ユーロ(約3000円)を超えることもあるので、たまにしか行かないです。代わりに、友人の家で作ったものを持ち寄って食べることは結構あります。そういうコミュニケーションがこっちは多いかもしれません」。

医療費はタダ。語学学校に通うとお金がもらえる!?


社会保障が充実しているフィンランドでは外国人でも医療費はタダ。梅沢さんがコロナに罹患したときも医療費はかからず、日本語の通訳付きでケアは手厚かったという。

さらに、将来の働き手になることを見越して、フィンランドの語学学校に通う奥様には国から給与まで支払われていたらしい。

「お金をもらいながら学校にいく変なシステムなんですよ。人口が少ないので働き手を作りたいという先行投資なんでしょうね。そこまでしてくれるから、こっちも働こうっていうマインドになるんですよ」。


さすが幸福度No.1の国だけあるが、手厚い社会保障の裏に潜むデメリットも感じるという。

「稼いだ分は税金として持っていかれるので、『いい車に乗りたい』『いい時計が欲しい』という価値観の人には合わないかもしれません。僕自身、ある程度そういったプライドを置いてきたつもりだったんですけど、たまにもっといい家に住みたいなぁと思うことはあります。

フィンランドに来てから得たこともたくさんあるので、自分をうまく納得させていますね」。

長くて寒い冬、乏しい食文化……帰国が頭をよぎる

寒さで凍ったHietaranta Beach。

寒さで凍ったHietaranta Beach。


「長く住んでいると日本の良さが際立ってきちゃうんですよね……。年末から年始にかけて3人の日本人が帰国しました。もう無理。寒いって。理由はそれぞれですが、長い冬がきついのも大きな要因ですね」。

フィンランドの冬は長い。寒い日はマイナス20度を超えることもあり、日照時間が6時間程度の日が数カ月続く。日照時間とうつ病は相関関係があると言われるが、事実、フィンランドはメンタルヘルスの問題を抱える人が少なくない。長くて寒い冬を耐えるのは過酷なサバイバルなのである。

「サウナはありますが、温泉はありません。きついときに支えになるのが食や友達だったりするんですが、フィンランドの食は乏しいんです」。

日本を出るときに友人たちが出汁をたくさん持たせてくれた。「絶対に出汁が飲みたくなるからって。本当でしたね。和食ってすごいです(笑)」。日本を出るときに友人たちが出汁をたくさん持たせてくれた。「絶対に出汁が飲みたくなるからって。本当でしたね。和食ってすごいです(笑)」。

海外生活が長くなると日本食が恋しくなるというのは誰もが通る「あるある」だが、自分のメンタルが支えられていたと気付くのは、52歳という年齢もあるかもしれない。
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文・取材=ぎぎまき

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