「僕を案内してくれたコーディーネーターがたまたまヘルシンキで美容院を開くのが夢で、僕がそこにうまくハマった感じですね。一緒に開業して、今は雇用されている立場。就労ビザで働いていますが永住権は来年、取得できる予定です」。
フィンランドにいる日本人は約2000人。日本では出会うことのないクラシックのミュージシャンなどがカットに訪れることも。「日本の一流と呼ばれる層が移住してきている印象ですね」と梅沢さん。
「自分を大切にする」国民性に最初は戸惑い
ヘルシンキに移住後、「ワーク・ライフ・バランス」はどう変化したのだろう。「今は週休2日で、8時間勤務です。それは法律で徹底されています。それ以上働くと、家族を大切にしてないとか、自分の人生をないがしろにしてるっていう空気になっちゃうんですよ(笑)。なので、以前よりも自分の時間が増えましたね」。
休みの日は散歩をして過ごすことが多いという。
「日本だと休みの日も銀行へ行ったり、なんだかんだ予定が入ってましたが、こっちだと何もしなくていい休みが結構あります。
予定通りの日程をこなす休みじゃなくて、そのときの気分に合わせて行動ができる日。めちゃめちゃ幸せですね。思考を整理できるし、気付きがたくさんあります」。
自由な時間を手に入れた梅沢さんだが、最初は日本と違う価値観に戸惑うことも多かった。
「フィンランドは自分がいちばん大事という考え。日本のようにお客さんが神様ではないから、家族の誕生日を理由に仕事を休む人もいます。
仕事が終わってなくても必ず終業時間には帰っちゃいますし、郵便物が予定通りに届かないことも多々。最初はスムーズに進まないことに苛立つこともありましたが、フィンランド時間と割り切ってしまえば、普通になりました」。
収入は減。お金を使う価値観が変わった
気になるのは収入面だ。
「額でいうと日本で働いていたときより減りました。カットの単価は神宮前では最終的に9000円をもらってましたが、ヘルシンキだと女性で85ユーロ(約1万2000円)、男性は75ユーロ(約1万1000円)です。単価は高いんですが、労働時間が短いので」。
客単価が増えても働く時間が少なくなれば収入も減る。ましてや、物価の高いフィンランドでは生活が経済的に厳しくならないのだろうか。