フォーブス・ウクライナ版が独自に行った分析によると、ゼレンスキーは国民を前に話すとき「占領者」「防衛」「勝利」など、軍の目標達成を強調するような言葉を使う。そして、ロシアとの戦いへの支持を求め、戦い続けるよう人々を鼓舞する。
一方、国外の聴衆に対しては、国内向けと同様の言葉を頻繁に使いながらも、発信するメッセージを少し変えている。「平和」や「攻撃」(をやめさせること)に重点を置くことで、自国の主権を守るため、各国の支援が必要であることを強調している。
563回の演説で「成功」
分析結果によると、ロシアがウクライナに一方的に侵攻を開始した昨年2月24日からの今年2月14日までの間に、ゼレンスキーは563回の演説を行っている。英マンチェスター大学の教授(政治学)であり、ウクライナの象徴となったゼレンスキーの半生とそのキャリアについて語った『The Zelensky Effect』の著者でもあるオルガ・オヌークは、彼の演説には「独特といえる特徴がある」として、次のように述べている。
「大統領は、ウクライナ国民、英国議会そして日本の学生たちなど、まったく異なる聴衆の心を動かすことにおいて、等しく成功している」
ただ、ゼレンスキーがこうして同じ言葉を「柔軟に使い分けながら」演説していることが示すのは、複雑な地政学的状況の下でかじ取りをする大統領が「ロシアとの戦争にまったく異なるものを望む国内外の聴衆たちの間で、いかに危ない橋を渡っているかということだ」という。
頻繁に使用された10の言葉
ゼレンスキーがロシアの侵攻開始から約1年の間に行ったスピーチで、頻繁に使用したのは次の言葉だ(太字は特に多く使われた語)。国内向け:occupier(占領者)、life(生命)、support(支援)、security(安全)、defense(防衛)、action(行動)、enemy(敵)、victory(勝利)、help(助け)、freedom(自由)
国外向け:life、freedom、Peace(平和)、security、aggression(攻撃)、right(権利)、missile(ミサイル)、weapon(兵器)、opportunity(機会)、support
(出典:フォーブス ウクライナ版、Oleksandr Nadelniuk)
ミシガン大学のユーリ・ジューコフ准教授(政治学)は、ゼレンスキーが国内に向けて発信するメッセージのなかで、ロシア軍をほぼ必ず「占領者」「敵」と呼んでいることを指摘している。