兵士と海兵隊員合わせて20万人がウクライナに展開されているロシア軍にとってこれは驚異的な死亡率だ。
軍が敵の死者数について主張する場合、懐疑的になるのが賢明だが、ロシア軍が本当に1日で兵士1000人を失った可能性があると信じるに足る理由がある。
また、このような高い死傷率を長く維持することができないと信じるに足る理由もある。
ウクライナ東部のドンバス地方での戦闘は今まさに残酷なものとなっている。ロシア軍はいくつかの軸に沿って攻撃しているが、東部の町バフムートの廃墟に陣取っているウクライナ軍の守備隊の端側以外ではほとんど進展がない。
ブフレダールのような集落やその周辺はロシアの度重なる攻撃で崩壊した。地雷原に埋もれ、大砲で打ちのめされた。そして激しく反撃するウクライナ軍の戦車が走り回った。ロシア軍の旅団が1回の攻撃で数十両の装甲車を失うと、数百人の兵士も失うかもしれない。
ウクライナ軍参謀本部の表現を借りれば「片づけられた」ロシア軍兵士の1090人という数字は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月下旬にウクライナに侵攻して以来、ロシア軍の典型的な1日あたりの死者数の上限だ。
米当局者は数週間前、ロシア軍の死傷者の総数は「20万人に迫っている」と推定した。しかし独立した調査組織Conflict Intelligence Team(コンフリクト・インテリジェンス・チーム、CIT)のアナリストらは同時期にロシア軍の死者数は27万人近くと算出した。バフムートでの1カ月の激戦を経て、27万人というのは実際より少ないかもしれない。
負傷者と死者の比率を3対1と仮定し、CITの推定に基づいて計算すると、最初の1年間でのロシア側の死者は6万8000人になる。これは1日あたり200人弱だ。
しかし平均は中央値ではない。平均的な日よりもはるかに血なまぐさい日もある。ウクライナの参謀本部が3月11日に主張した数字を上回る兵士が死んだ日もあったかもしれない。
米統合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将は、ロシア軍は2月中旬のとある日にバフムート周辺で「1200人近く」の兵士を失ったと主張した。マーク・ハートリング米陸軍退役中将は「硫黄島やテネシー州南西部シャイローでの戦いのようなものだ」と米国史上最も残虐な戦闘を引き合いに出した。
戦場からの情報は、1日に1000人死亡した可能性を裏づけている。3月14日頃にウクライナ軍の兵士がブフレダール周辺の激戦地でロシア人将校のものと思われるノートを見つけた。