健康

2023.03.18

睡眠不足がワクチン効果を低下させる可能性、特に男性で顕著

Getty Images

体の抗体反応は睡眠時間に左右されるようだ。学術誌『Current Biology』に掲載された新しい研究で、睡眠時間が6時間未満だと、特に男性で抗体反応の低下につながることが明らかになった。これは、新型コロナウイルス感染症のワクチンの効果が接種後2カ月ほどで落ち始めるさまに似ているかもしれない。

「ワクチンによってもたらされる防御は個々の免疫反応の大きさによる。抗体反応は臨床的に重要な防御の状態を示す指標であり、免疫の初期指標だ」と研究者らは研究の中で述べている。

これまでの研究で、ワクチン接種後の抗体反応の低下に関連するいくつかの要因が明らかになっている。高齢、喫煙、高血圧、肥満などだ。研究者らは、睡眠パターンが新型コロナワクチンの効果にどのような影響をおよぼす可能性があるかを調べることにした。2002年の研究で、睡眠時間が短い人は1日6~9時間の睡眠をとっている人に比べて、インフルエンザワクチン接種後の抗体反応がはるかに少ないことが明らかになったからだ。

その後の研究でも、睡眠時間の少なさがインフルエンザや肝炎のワクチン接種後の抗体反応の低下と関連するかどうかを詳しく調べ、さまざまな結果が得られた。研究者らは「我々の目的は新型コロナのパンデミックという現況下で、ワクチン反応を最適化する可能性のある比較的容易に修正可能な行動について、科学界と社会に広く啓発することだ」と論文で書いている。

研究チームはさらに詳しく調べるために、睡眠時間と肝炎およびインフルエンザのワクチンの効果について調べた7つの研究を分析した。しかし、新型コロナワクチンに特化したデータが不足していたため、研究では予防接種の抗体反応を改善することができる睡眠のような単純な行動介入を検討する必要性を強調した。

「客観的な睡眠評価を行った研究はすべて若年層や中年層を対象に行われたが、自己申告の睡眠時間に基づく研究では65~85歳の成人も対象とした」と指摘。「この年齢層では睡眠時間、睡眠の質、ワクチン接種の反応が一般的に低下し、より変動しやすいことを考慮し、高齢者層を除外した探索的データ解析を行った」と説明した。

「我々のメタ分析から示唆されるように、ワクチン接種前後あたりに十分な睡眠(少なくとも1日6時間)をとることで、さまざまなウイルス株に対する体液性反応を高める可能性がある」と研究者らは結論づけた。

米国立睡眠財団は、成人の場合少なくとも1日7時間、最大9時間の睡眠をとるよう推奨している。また、65歳以上の高齢者は7~8時間の睡眠が必要とされている。「だが、ワクチン接種前後のいつ睡眠時間を最適化するのが最も有益なのかを定義するために大規模な研究が必要だ」と研究者は付け加えている。

プレスリリースの中で、この研究の共著者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校ジェーン&テリー・セメル神経科学・人間行動研究所のカズンズ精神神経免疫学センター長のマイケル・アーウィンは「我々はこれまでに認知行動療法やマインドフルネスが不眠症をしっかりと改善し、免疫のさまざまな側面を正常化することを発見したが、不眠治療によりワクチン反応を増強できるかどうかはまだわかっていない」としている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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