水はどこから来たのか? おそらく最初は、太陽系の冷たい果ての小惑星や氷に覆われた彗星と共に地球にやってきたのだろうが、もしそうだとしても、それはパズルの最後の1ピースにすぎない。水は太陽が生まれる前から宇宙に存在していたのだろうか?
その答えは「イエス」だとする論文が8日、科学誌ネイチャーに掲載された。研究チームは、若い恒星の周りに水が存在することを初めて発見した。この恒星は、地球から1305光年離れたオリオン座の原始星「V883 Ori(オリオン座V883星)」で、その周辺には地球の海に存在する水の総量の少なくとも1200倍に相当する水があるという。
原始星V883 Oriの周りの惑星形成円盤を描いた想像図。挿入図には検出された2種類の水分子が描かれている。酸素原子1つと水素原子2つからなる通常の水(軽水)と、水素原子の1つが水素の重い同位体である重水素に置き換えられた重水だ。(ESO/L. CALÇADA)
この発見は、水が星間空間に存在するガスやちりなどの星間物質に由来するという理論の信憑(しんぴょう)性を高めるものだ。そして、太陽系の水が太陽より何十億年も前に形成されたことを示している。
米国科学財団国立電波天文台(NRAO)の天文学者で、論文の主著者であるジョン・トビンは「これまで、地球を彗星と、原子星を星間物質と結びつけることはできましたが、原始星と彗星を結びつけることはできませんでした」と述べている。「これは、惑星系の水は数十億年前、太陽よりも前に星間空間で形成され、その後彗星と地球の両方に比較的変わることなく継承された、という考えを裏付けるものです」
今回の研究結果は、水が星形成ガス雲から惑星へと移動したことを示すものだ。チリのアルマ望遠鏡を使用した観測により、V883 Oriの星周円盤(惑星形成円盤)の中に水があることが分かった。
ただ、この発見が可能だったのはV883 Oriの特異な状況のためだった。V883 Oriは、他の多くの恒星と異なり、周囲の水が固体から気体へと変わるちょうどよい温度だったため、電波望遠鏡での観測がより容易だった。多くの恒星系では、水が電波望遠鏡で検出不可能な氷として存在している。
「スノーライン(雪線=水が気体から固体に変わる境界線)が恒星に近すぎると、容易に検知できる気体の水が十分にないため、水からの放射の多くがちりの円盤に遮蔽されてしまいます。しかしV883 Oriでは、スノーラインが恒星から遠く、検出するのに十分な量の気体の水が存在しています」ととトビンは説明している。
(forbes.com 原文)