国内

2023.03.10

妊娠率改善「子宮内フローラ検査」を開発 Varinosが持つ技術優位性

Varinos CEOの桜庭喜行(撮影=林孝典)

「正直、検査自体は簡単に作れると思ったんです。腸内フローラを調べる解析技術がすでにあり、その方法を応用すれば子宮内の検査もできると。壁になったのは、菌の量でした。

腸内フローラを調べるのに使われる糞便には多くの菌が存在する一方、子宮内フローラは微量。微量な菌を検出しようとすると試験管の中の試薬や空気中の菌も検出されてしまったんです」
 
桜庭をはじめとする創業メンバーは、連日、DNAサンプルを増幅させるための酵素やサンプルを保存する容器の選定など、検査を確立するための方法を探り続けた。
 
「細菌の種類や割合を調べるのに、次世代シーケンサーという、高速でDNA配列を解読する機器を用いるのですが、1回15万円〜20万円かかります。これは創業期のスタートアップにとっては経済的に苦しかった。ただ唯一の救いはメンバーが全員科学者出身だったことです。理論に基づいた検証と改善をスピーディに行うことができ、無駄打ちが少なく済みました」
 
その過程で、Varinosはゲノム解析の手法も独自で編み出した。
 
「うちで使っているゲノム解析装置は、米国大手イルミナの製品です。イルミナが推奨する解析方法がありますが、そこから大きく外れた使い方をしています」
 
創業後、約10カ月にわたる試行錯誤の末、桜庭らは今の検査の基礎となる型を完成させた。その後も常に改良を重ねている。「微量の菌を正確にゲノム解析すること」こそがVarinosの強みであり、競合参入の壁になっている。
 
当初は20%の確率で判定不能が出たというが、数年かけて精度を上げ、今ではその確率は2%未満だという。桜庭は世界にも目を向け始め、2022年8月には6億円の資金調達を行った。海外の医療機関と連携し、検査を広めていくため、準備を進めている。

「不妊治療の患者さんは世界中にいます。当然グローバルで事業をやらなきゃいけないという気持ちです」


共同研究の依頼が次々に

子宮内フローラに関しては、不妊の治療のみならず、慢性子宮内膜炎や子宮内膜症、早産、子宮頸がんとの関係も研究により示唆され始めている。Varinosの技術は、ほかの分野へと応用ができるのではないかと、日本の大学や研究機関からの共同研究依頼が次々に舞い込んでいる。
 
「医学全体では、菌の関係が疑われる病気がたくさんあります。少量の菌からでも解析ができることが評価され、『この病気と菌の関係を調べたい。ゲノム解析してもらえませんか』という問い合わせが毎月のようにくる。

共同研究や自社の強みを活かし、子宮内フローラ検査のように、世の中にない新しい検査を作っていきたいと思います」

文=露原直人 撮影=林孝典

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