国内

2023.03.10

妊娠率改善「子宮内フローラ検査」を開発 Varinosが持つ技術優位性

Varinos CEOの桜庭喜行(撮影=林孝典)

2022年4月から不妊治療が保険適用となり、患者は原則3割の負担で治療が受けられるようになった。2023年1月には東京都が不妊治療の助成金制度の受付を開始。先進医療を活用した不妊治療費の10分の7を、15万円を上限に助成する。
 
不妊治療の経済的なハードルが下がるなか、先進医療のひとつ「子宮内フローラ検査」が新たな選択肢として注目されている。
 
腸内フローラという言葉を聞いたことがある人は多いだろう。無数に存在する菌がお花畑(flora)のように見えることからそう呼ばれている。腸内フローラには乳酸菌やビフィズス菌といった種類があり、それらを増やすことで腸の調子が整うとされている。
 
これと同じように、子宮内には善玉菌(ラクトバチルス)が存在し、それが妊娠率に関係している。2016年に発表された論文では、次のような結果が明かされた。
 
・ラクトバチルス90%以上のグループ 妊娠率70.6%、生児獲得率58.8%
・ラクトバチルス90%未満のグループ 妊娠率33.3%、生児獲得率6.7%
 
ラクトバチルスの観点で子宮の菌環境を知る検査を「子宮内フローラ検査」といい、日本では約300の医療機関で受けることができるが、その検査を提供しているのが、ゲノム解析技術を持つ「Varinos(バリノス)」というスタートアップ企業だ。検査は次のような流れで行われる。費用は医療機関ごとに異なるが、1回につき4万円〜6万円が相場だ。
 
1. 医療機関で、子宮内や腟から検体を採取
2. 検体から取り出したDNAをVarinosのゲノム解析装置にかけ、ラクトバチルスやその他の細菌の割合を検査
3. Varinosから医療機関に検査結果を送付。ラクトバチルスの割合が少ない場合には、医師から善玉菌を増やすサプリメントの投与や生活改善のアドバイスを受ける
 
Varinosは2017年2月に設立し、同年12月、先述の論文結果をもとに世界で初めて子宮内フローラ検査を実用化した。2022年6月には厚生労働省から先進医療にも認定され、これまでの検査数は2万検体以上となっている。
 
着実に広がっていく一方で、実はこの検査を提供するのは、世界でいまだVarinosを含めた2社しか存在しない。技術的なハードルが高く参入が難しいというが、それは、Varinosが世界の不妊治療マーケットに打って出られるという裏返しでもある。
 
同社の強みとは何か。CEOの桜庭喜行(さくらば・よしゆき)に聞いた。
 

「微量な菌の解析」に強み

子宮内フローラが注目され始めたのは2015年。存在しないとされてきた子宮内の細菌が発見されたことがきっかけだった。それから約2年で桜庭たちが開発した世界初の検査は、アーリーアダプターの医師たちの目に留まり、口コミによって導入が進んでいった。
 
検査導入の滑り出しは順調に進んだ反面「有効な検査を作るまでには多くの苦労があった」と桜庭は振り返る。
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文=露原直人 撮影=林孝典

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