考え方の基本「四聖諦」
「四聖諦(ししょうたい)」とは、下記の四つからなる教えだ。苦諦:この世の一切は苦である(一切皆苦)
集諦:苦しみの原因は、煩悩により生じる
滅諦:苦しみを取り除く方法は、煩悩を滅することである
道諦:煩悩を滅し、悟りを得るために八正道を実践する
そのなかでも特に重要な考え方は「苦諦」である。人生とは苦である……とはあまり考えたくないものだが、生まれた時から死に向っていることや、病気や愛するものとの別れなど、四苦八苦(生苦、老苦、病苦、死苦、怨憎会苦、愛別離苦、所求不得苦、略五盛陰苦)ともいうように、世の中は苦しみで溢れている。
苦を全面的に受け入れる心の土台があれば、日々の仕事の悩みやミスが取るに足らないものに思えたり、逆にほんの些細なことが喜びに感じられるなど、実はポジティブな思考を生み出すことができる。
「八正道」で煩悩を減らす
「八正道」は、四聖諦の4つ目の道諦の具体策として示された教えで、以下のとおりだ。正見:ありのままを正しく見る
正思惟:自分本位ではなく、真理に照らし合わせ考える
正語:嘘、悪口、陰口、無駄話を避け、正しい言葉を使う
正業:殺生や盗み、みだらな行為など、人として正しい行いをする
正命:正しい生活を行い、正しく生計を立てる
正精進:使命や目的に対して正しく励む
正念:今この瞬間の気づきに集中する
正定:揺るぎなく心をいつも正しい状態に置く
これらの教えを総合的に修練することで、人は苦しみや迷いを解消し、真の幸福を得ることができるとブッダは説いている。確かに倫理観や徳性を養うのに必要な要素が、実に美しくまとまっている。
昨今、多くの企業が利潤を追求するだけではなく、ビジョンやパーパスの浸透に力を注ぎ、社会的責任や環境保護に配慮し、コーポレートガバナンスを強化している。これは正しく生計を立てる「正命」に当たるであろう。
また、パワハラやセクハラなどの意識が高まる中、上司、部下の関係であっても「さん」づけや敬語を用いたり、細やかなニュアンスが伝わりにくいメールやチャットにおいて、より丁寧なコミュニケーションが意識されていることは「正語」にあたる。
「正念」はマインドフルネスを指し、例えばチャットやSNSにより意識があちこちに飛び、仕事に集中できないことが多い中、いまココに意識を向けて一つの事に没頭したり、未来への漠然とした不安やストレスから解放されることを説く教えだ。