経済

2023.03.03

小麦価格が再び上昇の恐れ 異例の暖冬が影響

Getty Images

今年の初春には、いくつかの気象現象が重なることによって深刻な降霜が予想されており、これにより今後の小麦の収穫が被害を受ける可能性があると専門家が警告している。

農業市場を専門とする金融会社Hackett Financial Advisors(ハケット・ファイナンシャル・アドバイザーズ)のショーン・ハケット社長は、「ハケット・マネーフロー・コモディティ・リポート」の最新版で、「冬小麦市場の上昇変動リスクが高まっている」と指摘した。つまり、小麦価格が再び上昇する可能性に備えよ、ということだ。

世界有数の小麦輸出国であるウクライナにロシアが侵攻したことにより、小麦価格は昨年5月中旬、1ブッシェル(約27キログラム)あたり13ドル(約1800円)まで上昇した。背景には、戦闘による収穫の中断や、黒海を経由する重要な小麦出荷経路の遮断に対する懸念があった。

しかし、食糧不足は当初懸念されたほど深刻なものにはならず、小麦価格はやがて下落。トレーディング・エコノミクスによれば、現在は1ブッシェルあたり7ドル(約960円)強の水準で推移している。

だが、3月に予想される深刻な霜害により、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の小麦先物は再び上昇する見通しだ。

「こうした霜害は、米国、欧州連合(EU)、ロシア、中国の冬小麦生産地域でとりわけ重大な被害をもたらす恐れがある」とハケットはリポートで述べている。「冬小麦地域の大部分は、積雪のない状態で春を迎えようとしており、霜害にきわめて脆弱(ぜいじゃく)だ」

一般に、雪は断熱毛布のように作用し、発芽した小麦を低温から保護する。そのため、雪がない状態では、発芽したばかりの小麦は降霜によるダメージを受ける可能性が高い。

ハケットによれば、深刻な霜害は3月後半に発生する可能性がある。そうなれば小麦価格は再び上昇する見通しだが、昨年5月のような桁違いのレベルには恐らく達しないだろう。

ただし、正確な気象予測は極めて難しい。一方で、今も続くウクライナ戦争という不確定要素があるため、小麦価格は今後とも通常より高い水準で推移するだろう。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ・編集=遠藤宗生

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