査読済み論文は科学誌ネイチャー・エネルギーに16日に掲載された。研究チームは、世界人口の87%以上をカバーする116カ国を対象に、2022年2~9月にエネルギー費の動向が家庭に及ぼした影響を分析。世界銀行が設定した国際貧困ラインに合わせ、1日2ドル15セント(約290円)未満で暮らす人を貧困者と定義した。
論文によると、家庭の総エネルギー費は世界で63〜113%上昇。主な要因として、エネルギー価格に間接的に連動する製品、サービス、食料などのコスト上昇があったとされる。これらの間接的なコストが全体の増加分に占めた割合は45〜83%だった。暖房やガスなどの直接的なエネルギー費用に起因する増加分は全体の15〜30%だった。
全体として、エネルギー費の上昇は家計の総支出を世界全体で2.7〜4.8%増やし、新型コロナコウイルス流行とインフレによる圧力に拍車をかけていた。研究チームは世界各国の政府に対し、弱者家庭に支援の的を絞り、エネルギー、必需品、食料を適切な価格で入手できるよう取り組むよう訴えている。
ロシアは世界のエネルギー市場において鍵を握る国であり、エネルギー分野はロシア経済にとって極めて重要だ。2021年時点で、ロシアは世界最大の天然ガス輸出国で、原油輸出は世界2位、石炭輸出は3位だった。そのため、2022年のウクライナ侵攻は世界のサプライチェーンを大混乱に陥れた。ロシア政府はエネルギーを武器に、ウクライナを支持する国々、特にロシアの天然ガスに大きく依存していた欧州に圧力をかけた。西側諸国がロシアのエネルギー産業を対象に制裁を科したことで、事態は悪化。市場は混乱し、コスト上昇につながった。
エネルギーは輸送から製造、暖房、販売まであらゆるものに影響を与えるため、物価は上昇し、生活費も高騰。一方、エネルギー価格の高騰は、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)、Shell(シェル)、Chevron(シェブロン)、ExxonMobil(エクソンモービル)などの石油・ガス会社にとって恩恵となり、各社は2022年に過去最高益を記録した。各国の政府などは、これらの企業が危機から利益を得ており、価格抑制に取り組まずに利益をため込んでいると批判している。
(forbes.com 原文)