国内

2023.02.28 18:35

「疲労軽減ウェア」の売り上げ10倍 浸透し始めたテンシャルの思想

TENTIAL代表の中西裕太郎(撮影=曽川拓哉)

“落ちる時期”を救う

「スポーツ選手がケガをして戦線離脱が起きるように、ビジネスマンも腰痛や肩の痛みなどで生産性が落ちることがあります。誰しも“落ちる時期”があって、そういう人を救いたい。その人の人生を支えるような存在になり、60歳や70歳になっても活躍し続けられる社会にするというのが、企業として持っている私たちの思想です」
-->
advertisement

その思いに至った背景には自身の経験があるという。中西はもともとサッカー選手として、インターハイに出場するほどの実力の持ち主だった。しかし、高校3年生の時、中西を狭心症が襲う。アスリートとしてのキャリアを断念せざるを得なくなるような致命的な病気だった。

「正直なところ、高校生の頃は自分が王様だとか、女子にモテたいとか、自分中心の考えでサッカーをしていた頃もありました。でも病気に罹患し、サッカーを続けられなくなるどころか、『死』ということもちらついた。この深刻な経験から、限りある人生を、人のためになることに使いたいと思うようになったんです」


advertisement

TENTIALの商品には、中西の実体験をもとにした思いが、反映されているのだ。そのためか、ブランドへの応援という形で購入が行われることの多いクラウドファンディングでも大きな盛り上がりを見せている。例えば直近で実施している姿勢矯正インナーでは、目標額の10倍となる約1000万円を集めた。

「他のブランドとの違いは販売チャネルです。多くの場合、商品購入の際は大手のECサイトで商品を探しますが、TENTIALの商品は8割の方が自社サイトから購入している。ユーザーの多くがリピーターの方たちです」

もちろん、商品が良質であるという大前提はあるが、TENTIALの掲げる思想への共感も徐々に高まっていると言えるだろう。

商品開発に資金を投入

TENTIALはすでに上場も見据えている。そうしたなかで、今後は商品開発を加速していくという。

「通販モールと商品開発の2軸があるなかで、どちらに資金を投じるか。IPOを目指すうえでそうした議論が社内でも活発になっています。

現状ではTENTIALブランドの商品販売に勝ち筋が見えており、そちらに注力していきたいと考えています。最終的にユーザーは、商品の質や満足度で会社を評価すると思うので」

スポーツ選手の課題としてよく挙がるのが、セカンドキャリアだ。引退後に飲食店を開いたが、経営が振るわないという話を時々耳にする。中西の場合は、「死」を身近に感じたという体験を見事に昇華させ、自らが信じるビジネスを開拓して、軌道に乗せている。

スタートアップ経営者としてだけでなく、アスリートのセカンドキャリアのロールモデルとしても、さらなる活躍を期待したい。

文=露原直人 撮影=曽川拓哉

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事