AI

2023.03.02

なぜ私たち人間はAIに偏見を持つのだろうか

Getty Images

ChatGPT(チャットジーピーティー)に対する私たちの否定的な反応は、AIの限界というよりも私たち自身の限界を物語っている。

人工知能は発展途上だ。そしてまた、人類もそうであってほしいと願われている。

私たちは、この地球上に生息する生物の中で最も適応力のある生物かもしれない(少なくとも、私たち自身はそう思っている)が、その知性は今、脅威にさらされているのかもしれない。この逆説的な理由は、私たちは自分たちよりも賢い何かを発明してしまったからだ。だが、ほとんどの人はこの考えをすぐに否定する。

実際、AIに対する人間の態度には否定的なものが多い。技術愛好家やAIの販売ビジネスに熱心に取り組んでいる人は別として、典型的な人は、これまでに知られているほとんどの AIのアプリケーションを軽視するか恐れている。

たとえば、私たちは自動運転車が事故を起こすとショックを受けるが、人間のドライバーによって毎年約130万件死亡交通事故が発生していることを考えることはほとんどない。同様に、私たちは採用のためのアルゴリズムやAIに不信感を抱き、性差別的な判断や人種差別的なコメントを生み出す不正なチャットボットの話に怯えながら、その一方では偏見のある面接官や偏った採用担当者、そして才能ある人々の仕事は見過ごされ、才能なきナルシストが、リーダーとして選出(または当選)し続ける世界に完全に慣れているかのように見える。

人為的ミスの減少から恩恵を受ける重要な決定のリストは多い。たとえば、陪審員の決定医療診断信用スコアリング保険料、さらには人間関係でさえ(おそらく米国で毎年74万6971 件も提出される離婚届を減らすこともできるだろう)。

AIを否定する最近の話題は、主にChatGPTに集中している。たとえば不正確である、偏りがある、まあ、むしろ人間的だという理由でも幅広く攻撃されている。最近のニューヨーク・タイムスの記事は「ボットは攻撃的になり見下し、脅し、政治目標に専念し、粘着し、不気味で、嘘つきになりうる」と指摘した。

機械が人間の良くない特徴を示すと、人間はそれに対する嫌悪感を抱くが、人間の中にもある同じような良くない特徴を非難したり抑圧したりする方向にはならないようだ。しかし、私が最新の著書で説明したように、これこそがAIが極めて有用である点なのだ。AIが示す望ましくない特性は、私たち人間の資質の反映に過ぎないと受け入れられる自己批判の心を持ちさえすれば、自己認識を高める道具として利用することができる。

人間の世界は、不公平なルール、気まぐれな偏見、目に見えない偏見に支配されているが、AIが人間の思考や意思決定を模倣するようになれば、そうしたものすべてが露呈する可能性がある。私たちから学べば学ぶほど、AIは私たちのダークサイドを再現するようになるのだ。しかし、これはチャンスでもある。私たちは自分の偏見や欠点を認めたくないかもしれないが、それをAIに移し替えると、AIがそれを完璧にし、増幅することができるので、そうした偏見や欠点を容易に発見できるからだ。
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翻訳=酒匂寛

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