採掘手順も環境問題をはらんでいる。リチウムは自然界に単体で存在しているわけではなく、マグネシウムやホウ素など多くの不要な鉱物と混ざりあっているため、不純物を取り除く作業が必要となる。まず広大な塩原の底に沈殿したヌルヌルしたかん水(リチウム塩水)を汲み上げ、天日で水分を蒸発させて濃縮し鉱物を抽出するが、この工程は時間を要し、非効率的で完了まで1年以上かかることもある。さらに、この地域では日照時間が一定でない。また、かん水の汲み上げには大量の水を必要とするが、真水はこの地域では乏しく貴重な人的資源であり、貯蔵、汚染、廃棄をめぐる困難かつ高コストの問題が生じる。抽出した鉱物から不純物を取り除く精製工程にも、環境適合性に疑問のある技術が用いられている。
そこで、ボリビアは「直接リチウム抽出法(DLE)」と呼ばれる新技術に着目している。かん水に化学物質を添加して抽出工程を迅速化する技術だが、これまで米アーカンソー州とアルゼンチンでしか試みられておらず、結果はまだ公表されていない。
成功すれば、ボリビアは一夜にして世界経済の舞台に躍り出ることができる。一方、ボリビア国民は国営リチウム公社(YLB)が輸出用のリチウム増産と同じくらい環境に配慮することを望んでいるが、これは今のところ実現していない。とはいえ、ボリビアと中国のパートナーシップが成功すれば、太陽光や風力など持続可能な「グリーン技術」で発電した電力の大規模貯蔵に不可欠な電池を製造するためのリチウムを、世界規模でより大量に入手できるようになる。しかし同時に、ボリビアのリチウム鉱床は中国政府の厳しい管理下に置かれることになる。そして、この重要な元素の管理と電池への利用に関する中国政府の将来計画は、現時点ではまったく不透明なままなのだ。
(forbes.com 原文)