消費削減は高級品で最大に
大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査によると、高級ブランドの今後6カ月間の状況は今と同じか、悪化する見通しだ。25の市場で消費者9000人超を対象に実施された同調査では、消費減速の影響を最も受けるのが高級・プレミアム部門となることが示された。調査によると、消費者の53%が不要な支出を控えており、中でも高級品は最も不要な支出と考えられている。支出の習慣を見直すと答えた人は96%に上った。
特に、高級・プレミアム商品またはデザイナーブランド品への支出を減らすとの回答は、53%に上った。支出で大きな割合を占める衣料品の購入を減らす人は41%、旅行を控える人は43%だった。
心理的スイッチ
高級品を買おうとする人は、たとえそのために多くの金額を支払うことを覚悟していたとしても、過去数年間での価格の上昇ぶりに驚くかもしれない。調査・コンサルティング会社ラグジュアリー・インスティテュートのミルトン・ペドラザCEOは筆者に対し、「すべての高級ブランド・グループ大手にとって、2022年の成長の大部分は強気の価格設定によるものであり、販売数量の伸びによる成長ははるかに少ない」と説明した。
「富裕層や超富裕層の消費者でさえ、同じ商品の価格上昇には限度があると言っている。2023年は高級品業界の大半で成長が鈍り、2024年に回復すると予想している」(ペドラザ)
デロイト・インサイト・コンシューマー・インダストリー・センターのマネジングディレクター、スティーブン・ロジャーズによると、消費者の頭の中では、価格が自分の考える許容範囲を超えると心理的「スイッチ」が入り、その価格を受け入れるか、より低価格の代替品に切り替えるか、あるいは何も買わないかを考えるようになる。
「低所得の消費者は、経済的な理由から、このような選択、低価格品への切り替えなどを常に行っている。しかし高所得の消費者も異なる理由で同じような切り替えをする可能性がないわけではない」
「企業が不当な価格設定をしていると消費者が感じれば、たとえ高い価格を支払う余裕があったとしても、高所得の消費者は高級ブランドを避けるようになる可能性がある」
格好の例を挙げよう。庶民派スーパーマーケットを展開する米ウォルマートのダグ・マクミロンCEOによると、同社の最近の成長は高収入の消費者のおかげだという。「当社は米国で今四半期も高収入世帯を含むすべての所得層でシェアを拡大した。高収入世帯がシェア拡大の半分近くを占めている」(マクミロン)
内外の要因が「リッチセッション」を引き起こすことになりそうだ。コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーとイタリアの業界団体アルタガンマが行った調査によると、富裕層の間で新型コロナウイルス流行中に抑えられていた高級品に対する需要は過去2年間でほぼすべて満たされており、市場は2020年から2021年にかけて32%、2021年から2022年にかけてさらに22%成長した。
現在の経済環境を考えると、富裕層は嵐が去るまで購入のスイッチを切ることをいとわないかもしれない。
(forbes.com 原文)