GMOインターネットグループの迷いなき55カ年計画と衰えないベンチャー精神

熊谷正寿 代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEO

27年の間には、文字通りの「どん底」を味わったこともあった。2007年にグループ会社だったオリエント信販を売却し巨額の損失を計上。18年には暗号資産ビジネスで350億円超の特別損失を出した。それでも踏ん張れたのは「組織が『GMOイズム』を軸に動き、成長していたから」だと熊谷は言う。

GMOイズムには、GMOインターネットグループのビジョンやフィロソフィー、組織運営のノウハウ、パートナー(社員)の行動指針や判断基準が記されている。その冒頭にあるのが、熊谷が「旧約聖書でいうところの創世記」と称する「スピリットベンチャー宣言」だ。その内容は実に細かく、経営マインドの基本行動原理・原則だけでも86項目ある。パートナーは週1回など定期的に集まっては全員で宣言を唱和する。

「僕は、長く続く組織のあり方を宗教から学びました。宗教には定期的に集まり、同じものを読み歌い、同じものを身に着け、同じポーズをし、神話があるという5つの共通点があります。GMOイズムを全員で唱和することで僕の思いや考え方、成功の法則を共有できる仕組みにしているんです」

もうひとつ、GMOインターネットグループの定量目標のバイブルが「55カ年計画」だ。熊谷が35歳のときに決めたもので、51年までの定量目標はすべてこの計画に基づく。「時間イコール人生。迷う時間は人生のロスです。大海原なら灯台、大草原なら小高い丘の1本の木を見定めることで、時間を無駄にせず直線的に進むことができる」

成功の再現性を高める仕組みをつくり、成功までの道のりを設計し、迷いなく成長し続ける人と組織をつくる。そんな熊谷の目下の経営課題は、後継者の育成だ。

「『企業は人なり』で、組織にとっていちばん大事なのは人です。普通の経営者は次の後継者選びに悩むのでしょうけれど、僕は後継者が持続的に出てくる仕組みをどうつくるかを考えています。世界最高水準の方々にお越しいただき、モチベーションをアップし、自走型組織にしていく。これが、いまの僕の最重要課題のひとつです」


くまがい・まさとし◎1963年生まれ。國學院高校中退後、父親の事業を手伝う。91年ボイスメディア(現GMOインターネットグループ)を設立。95年にインターネット事業に参入し、99年に株式店頭公開。2005年に東京証券取引所一部上場。

文 = 瀬戸 久美子 写真 = 苅部 太郎

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