GMOインターネットグループの迷いなき55カ年計画と衰えないベンチャー精神

熊谷正寿 代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEO

「自分の人生のなかから生まれたアートとして、このグループが100年単位で成長し、世の中のためになる組織になってほしい。そのための仕組みづくりを意識しながら27年間ずっと経営してきた結果です」

2008年以来、13期連続増収増益のGMOインターネットグループ。上場企業のなかでもここまで増収増益を続ける会社は少ない。強さの秘訣を問うと、熊谷正寿は穏やかな口調でこう答えた。

同社のビジネスモデルの強みは、ドメイン管理やクラウドホスティングなどストック(継続課金)型の商材にある。GMOインターネットグループでは、これらの商材がもたらす収益を「岩盤ストック収益」と呼ぶ。その額は21年12月期の連結売上2414億円のうち、過半を占める。

「このストック収益をベースに加えて毎日1万件を超える新規のご契約をいただいていますから、収益は積みあがる構造になっています。これが、創業時から目指してきた私どもの事業構造の強さです」

21年からはNFTやWeb3など、業界のバズワードに関連する事業でも新たな攻勢をかけている。21年8月にNFTマーケットプレイス「Adam by GMO」を開始し、22年7月にはWeb3ベンチャー支援に特化したコーポレートベンチャーキャピタル「GMO Web3」を設立した。新たなチャレンジに総張りできるのも、収益基盤が盤石だからだ。

「僕はインターネットの業界が長いので、バズワードイコールうまくいくとは思っていない。でもバズワードをばかにしていると、振り返ったときはもう遅いのがこの世界です。Web3関連事業に関しては7年前からグループ各社でやってきているので、バズりが後からついてきたという印象ですね」

経営者としての先見の明は、事業家だった父から受け継いだ資質なのかもしれない。熊谷の父は満洲からの引き揚げ者で、裸一貫で汁粉店や映画館、パチンコ店を経営し成功を収めた人物だ。そんな父を見て育った熊谷は、物心ついたころから自分が後継者になると信じて疑わなかったという。

だが、高校を中退し父の事業を手伝い始めてしばらくたったころ、自分に母の違う兄と弟がいることを知る。後継ぎにはなれないと気づいた熊谷は、自らの力でゼロから事業を起こすことを決意する。1995年にインターネット事業を開始以来、サービスの自社開発にこだわりながら事業を拡大してきた。
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文 = 瀬戸 久美子 写真 = 苅部 太郎

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