起業家

2023.02.22

受講生倍増し21億円調達 スクーに聞く「リスキリング」の現在地

スクー代表の森健志郎(提供=スクー)

森は、「リスキリングは言葉だけが先行し、実際に、世の中の取り組みはほとんど始まっていない。これから本格的にスタートします」と言うが、スクーによるリスキリングですでに転身した人間も生まれている。
 
例えば、石川県で長く靴のデザイナーとして働いてきた20歳の男性は、仕事の依頼が減るなかスクーをし、ウェブデザイナーとして働き始めた。また山口県でサービス業に就いていた30代の女性は、結婚・出産を機に仕事を離れた。その後新しいことに挑戦したいと思い、SNSの運用スキルやデザインに関する授業を数カ月受講。現在は主婦をしながら、フリーランスで仕事を始めた。

日本の勝ちパターンが崩壊、人材育成急務に

ではなぜ、今これほどまでに「リスキリング」が注目され出したのだろうか。その理由を森は次のように語る。
 
「日本の経済成長の勝ちパターンが崩壊したことが理由の1つです。 これまで国は、協調性と画一性を育む教育を施し、チーム一丸となり、ものづくり産業を中心に経済成長してきました。しかし周知の通り、海外では日本企業の事業規模をはるかに上回るGAFAのような巨大企業がたくさん生まれてきました。
 
そうした状況に対応するために叫ばれているのは『デジタルで新しいことを創造しよう』『GXや脱炭素を意識して新しいビジネスをつくろう』という、デジタル人材の育成と成長産業への労働移動です。しかし、それに対応できるスキルを持つ人材が不足している。そのなかで、国として注力していこうという機運が高まっているのが現状です」
 
そんななかで、あくまでも状況対応的ではあるが「人へ投資することが見直されたのは健全な動き」と森は考える。
 
スクー社内では、古瀬康介CLO(チーフラーニングオフィサー)が「スクーユニバーシティ」という企業内大学を実施。全従業員が参加して、新卒1年目から3年目は全員「ビジネス基礎課程」に所属し、実践的なビジネススキルやロジカルシンキングなどを学んでいる。
 
他の社員も、全員参加可能な「みんなで学部」やマネジメント学部など、スキルや嗜好に応じて自分に合ったコンテンツを学習している。森を学部長としたイノベーション学部やウェブメディア出身の滝川麻衣子CCOによるリベラルアーツ学部なども開講予定だ。
 
スクーは、2月22日にシリーズEとして約21.5億円の資金調達を発表。上場に向けた準備も進めている。今後は、調達した資金をもとに既存サービス充実のための体制強化や、新規開発への投資なども行っていくという。
 
ここ1年でAIが急速に存在感を増してきた。働き手たちは、リスキリングで新たな道を模索するか、アップスキリングで今のスキルを高めるか、どちらかの選択に迫られていくだろう。そしてその受け皿としてのスクーがさらに成長していきそうだ。

文=露原直人

ForbesBrandVoice

人気記事