いっぽうで、トヨタは、「世界のマーケットですべてのユーザーがEV車を欲しがっているわけではない」と読んでいる。例えれば、シェフがテーブルに料理を一品出しただけで、みんなが満足するわけではない。
また、日本国内で自動車生産に携わる550万人余の仕事を保持したいのも、大きな理由だ。日本では自動車産業が15兆円納税し、他の産業に関連して経済を引っ張っている。国内で10人に1人は、自動車関連の仕事についている。自動車は2万個以上のパーツを要するが、EV化によってそれまで作ってきたパーツが不要になり、職を失う人がいることは無視できない問題だ。
EV化には、インフラや電力、電池の開発も伴う。その中で、EV化を急ぐことだけが「カーボン・ニュートラルな世界の実現」への道だとは言い難い。佐藤次期社長の「今回のEVファーストの話は、これまでの戦略を大きく変えるものではない」との発言は、「メイン料理はもちろんだが、副菜にもさらに力を注ぐ」という意味だろうと解釈している。
国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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