2023.02.19

急な発表「トヨタEV優先」の作戦、世界はどう見るか?

トヨタがやってきたこと

一見、トヨタがついに世界の動き、というか傾向を認め、方向を変えたように見える。でも、この話はそう単純ではない。

ロイター通信によると、2022年6月に、トヨタの社長は日本政府に対して、ハイブリッド車を電気自動車と同等に支持することを明確にするよう働きかけ、さもなければ自動車業界の支持を失うことになる、と、ある幹部議員が与党会議で発言した。

前年年7月には、ニューヨーク・タイムズ紙が、「トヨタの役員は、ここ数週間、密室でアメリカ議会指導者と会談しEVへの移行を奨励するために数十億ドルを支出するバイデン政権の計画に反対を唱えている」と伝え、同じ時期に、アメリカの「ザ・ヴァージ」という有力サイトが、「世界最大の自動車メーカー、トヨタはワシントンDCの政策立案者たちに対して、EVへの移行を促す声に抵抗するようロビー活動を展開している」と伝えた。

トヨタ幹部は同年8月ラスベガスで、「EVだけではなく、プリウスのようなハイブリッド車といった多様な選択肢を提供すべきだ」と表明し、一貫した姿勢を見せていた。

トヨタはEVを「遅らせようとした」のか?

こういう世界的なEVへのシフトを「遅らせようとした」と捉えられ、トヨタは欧米ではかなりひんしゅくを買った。だから今回の佐藤氏の「EVファースト」発表は、確かに正当な新しい作戦であり、今までのトヨタの「EVに反発する」ポリシーに対するダメージ・コントロールともいえる。

米サイト「モンローメ・ライブ」では、このタイミングで「EVファースト」を主張する佐藤次期社長への移行を発表することは、ハイブリッドを優先しEVへのシフトを加速しなかった豊田社長の顔を潰さないための作戦だと言っている。確かにそうとも見える。
満を持して登場した新しいプリウスは圧倒的な支持を得ている。

満を持して登場した新しいプリウスは圧倒的な支持を得ている。

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文=ピーター ライオン

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